(21.4.19) 八ッ場(やんば)ダム建設計画について
最近行なわれた千葉県知事選挙の争点の一つが、八ッ場(やんば)ダム建設計画の是非を問うものだった。
私自身は八ッ場(やんば)ダムについて今までまったく知らなかったし、千葉県のほとんどの有権者もこの選挙で争点になるまで、知らなかったのではないかと思う。
そもそもこのダムがどこにあるのかも分からなかったし、何の目的で建設されるのかも知らなかった。
しかし候補者の吉田氏も、西尾氏も建設計画に反対で、建設が中止されれば760億円の千葉県の負担金が要らなくなるとの説明だった。
当選した森田知事は選挙期間中は態度を明確にせず、「当選後に情報を集めて精査する。軽々には判断できない」と言っていたが、選挙が終わって6日後に「治水、利水の両面からやらなければ駄目だ。早期完成に向け千葉県も賛同したい」と態度を明確にした。
実に速い精査に選挙民は驚いたが「実は基本的に賛成だった」と本音を漏らした。
調べてみると八ッ場(やんば)ダム建設計画は日本のダム建設の中でも屈指の反対運動がなされてきたダムであることが分かる。
そもそもの始まりは1949年の「利根川改定改修計画」からはじまったというのだから、60年も前のことで、私がヨチヨチ歩きの頃だ。
八ッ場(やんば)ダムの建設予定地は利根川の支流、吾妻川の吾妻渓谷の中間部に予定されていた。地図で確認すると分かるが草津温泉の近くで、長野県に近い。周りは温泉郷と言える。
このダム建設計画は一旦中断されているが、近くの温泉街から流れ出る水が強酸性で、とても飲料水として適さなかったからである。
計画が再び持ち上がったのは1965年に「草津中和工場」ができ、吾妻川の水質が改善されたからである。
「良し、これなら飲料水としても使用できる。ダムを建設しよう」
1967年に建設省はダムの建設を決定した。
この計画が実現すると、1億トン級の水がめができ、首都圏の水対策として万全だと言うのが建設省の説明だった。
しかし八ッ場(やんば)ダム建設には地元の長野原町で大反対が起こった。最大の理由は水没するのが長野原町の河原湯温泉街なのに、固定資産税はダムがある吾妻町に入ることになっていたからだ。
「犠牲を払うのが長野原町なのに、固定資産税は吾妻町か」
あまりに反対運動が激しく、建設省の役人は河原湯温泉街に足を踏み入れることもできなかったと言う。
さすがに政府としても公平性の原則にかけると判断して、1973年に「水源地域対策特別法」を制定し、受益を受ける下流部の地方公共団体に負担金を科すことにし、それを財源に犠牲を払う市町村に生活再建案を提示することにした。
これが千葉県知事選挙で争点になった負担金760億円のことである。
これにより長野原町周辺の道路やJR吾妻線、および代替地の整備が進むことになったため、さすがの反対運動も収束し、1992年には「ダム建設推進を前提にした協定書」が長野原町、群馬県、建設省の間で締結された。建設省が建設を決めてから25年後に当たる。
1994年以降は順次道路の建設が進み、住民の代替地の建設も進んだが実際は代替地に住む予定の人は当初予定の5分の1程度になってしまった。住民は長野原町から移転し、都会に移り過疎化が進んでいる。
現在はダム本体の建設にはいまだ着手されておらず、もっぱら周辺の道路やJRの付替え工事、および仮排水工事が行なわれており、完成は当初予定の2010年から2015年に延長されている。
このダム建設史上最長といえる期間をかけて建設している八ッ場(やんば)ダムについて森田知事は治水、利水の面から必要と説明しているが、これに対しては有力な反対意見がある。
治水については建設省(現国土交通省)が進めた、大規模堤防(スーパー堤防)により水害の危険性は大幅に緩和されと当の建設省(国土交通省)が説明していること、および利水についても飲料水は基本的に首都圏では足りていて水需要が減少していることがあげられている。
また建設費用は4600億円といわれているが、基金事業費や起債の利息を含めると8800億円相当と試算され、さらに千葉県の負担金が増加する可能性があることである。
「結局、建設会社を儲けさすためだけのダム建設で、治水も利水も本当は必要なく、千葉県を含む下流部の都道府県の負担が増すだけではないか」というのが有力な反対意見となっている。
これに対する森田知事の説明はまだされていない。
別件
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