« (21.3.31) おゆみ野守り人について | トップページ | (21.4.2) 自動車を捨てて »

(21.4.1) オバマ大統領とGMのチキンレース

Cavrxihwca5sbwz5caqf14rycabg0579cab  オバマ大統領GMの関係はほとんどチキンレースになってきた。チキンレースとはアメリカ映画でよくある度胸試しのゲームで、たとえば自動車を互いに向き合って全速力で飛ばし、ぶつかりそうになった時に最初にハンドルを切ったほうが負け(チキン)とするあのゲームである。

 オバマ政権は、この3月末までGMクライスラーの再建計画を検討し、その内容が不適切であれば支援を行なわず倒産させるといきまいていたが、実際はGMに2ヶ月、クライスラーに1ヶ月の猶予を与えて、再度再建計画を提出させることにした。

 その間の必要な運転資金については、政府が面倒を見ることにしたのだから、3月末をターゲットとしたチキンレースオバマ政権の負け(チキン)になった。

必ずオバマ政権はGMを助ける」と読んだワゴナー会長の強気な読みは当たったわけだ。
もっともオバマ政権としては、一方的にGMに押し切られたことになると国民が納得しないのでワゴナー会長に懇願した。
会長の首を差し出してくれ。そうしないと国民に説明できない

 ワゴナー会長は退職しても年金が合計で20億だそうだから「まあ、いいや。こんな苦しい仕事をするよりマイアミの浜辺で寝ていた方がよさそうだ」と応じてくれたので何とかオバマ政権の面子だけは保てた。

 しかし2ヶ月間の猶予をもらったものの、2ヵ月後にGMから政府を納得させるだけの再建計画が出てくると考えるのは余りに楽観的過ぎる。
なにしろ販売実績が前年比約50%に落ち込んでいて、そもそも自動車の需要がないのだから再建のしようがない。
トヨタ自動車でさえ赤字なのに、そのトヨタより高コストでかつエコカーで出遅れているGMがどうあがいても黒字になるはずがない(クライスラーも同じ)。

 GMの問題は2つあって、一つは過去の負債をどのように処理するかであり、もう一つは現状で黒字体質になるにはどうしたらよいかである。
08年通期赤字約3兆円で、債務超過額は8兆4千億円なのだから半端ではない。
過去の8兆円規模の債務超過の処理と、毎年出てくる3兆円規模の赤字をどうするかGMの課題だから、おいそれと解決できるような問題ではない。

 この債務超過額8兆円社債借入金や政府の公的資金で穴埋めしており、公的資金以外は利息の支払いに応じなければならない。さらにこわもての労働組合UAWとの約束の退職者向け医療費負担2兆円が重くのしかかっている。

 過去の負担がこんなに重いのに、現状では昨年の半分しか自動車は売れず月を追うごとに赤字が累積している。
どうすりゃいいんだ。やりようがないじゃないかワゴナー前会長でなくとも居直りたくなる。

 結局はGM連邦破産法11条を適用して、社債と株式と借入金と退職者向け医療費を全てチャラにし、さらに現在の生産規模を半減し、労働者も10万人規模から5万人規模まで縮小して再建するよりほかに手はない。

 しかし、これはオバマ政権にとっては悪夢以外の何者でもない。なにしろGM関連の全ての企業群をあわせると従業員数は約300万人と言われているが、少なく見ても半分の150万人が失業者になってしまう。
この失業者を救う企業などアメリカのどこにもない。
これではオバマ政権一枚看板国民に仕事を与える」という公約が吹っ飛んでしまう。

 さらにGMに貸出しをしている金融機関社債権者がバタバタ倒れてしまえば第2波の金融恐慌の大波が襲ってくる。
金融機関自動車産業が倒れたらアメリカはおしまいだ。
だからオバマ政権経済状況が好転してGMの車が売れ出すまで手荒な措置はとりたくない。
自動車産業を消滅させてはならないし、消滅させない」というオバマ大統領の言葉は本気である。

 さてこのオバマ政権GMチキンレースは今度は2ヶ月先の6月末になった。このときまでに抜本的な再建策を提出しないと、連邦破産法11条を適用するとオバマ大統領は言い出した。
ただしこれは金融機関UAWに妥協をせまるブラフにすぎない。

 問題は2ヵ月後に政府が要請した無担保債務180億ドルの株式への変更と、退職者向け医療費100億ドルの削減が達成できるかどうかだ。
もしできればオバマ政権としたら国民に公的資金を導入する説明がつく。しかし達成できなければ3月と同じチキンレースになる。

 チキンレースではオバマ政権チキンになる可能性が高い。150万も失業者が増大しては政権基盤が揺らいでしまうからだ。

 大統領就任前オバマ政権になれば、8000億㌦を上回る規模の景気刺激策を講じて、300万から400万の新規雇用を創出すると言っていた。しかし一方で150万も失業者が出てはザルに水をそそぐようなものだ。

 結局オバマ政権は泣く泣く毎回チキンとなり、それでもGMの経営は好転せず(クライスラーも同じ)最後は清水の舞台から飛び降りるように連邦破産法11条の適用に追い込まれるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

|

« (21.3.31) おゆみ野守り人について | トップページ | (21.4.2) 自動車を捨てて »

評論 世界 アメリカ経済 自動車」カテゴリの記事

コメント

ご無理でなかったら連邦破産方11条を教えてくださいませんか?

(山崎) 一番簡単な説明は以下のURLをクリックしてください。http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CF%A2%CB%AE%C7%CB%BB%BA%CB%A1%C2%E811%BE%F2

実際の運用は、借金を棒引きすれば経営が再建できる企業に適用されることが多い法律です。その場合はほとんどの債権者が債権を放棄するか、分割弁済に応じるか、株式への変換を認めて企業を助けることになります。これは裁判所の管理下で行われるもので、旧経営者にとってしがらみから解放されて、心置きなく借金棒引きができる倒産企業に有利な法律といわれています。

投稿: きなこ | 2009年4月 1日 (水) 15時32分

この記事へのコメントは終了しました。

« (21.3.31) おゆみ野守り人について | トップページ | (21.4.2) 自動車を捨てて »