(21.3.5) ネガティブ・キャンペーンが始まった。 小沢一郎第一秘書の逮捕
ネガティブ・キャンペーンが始まった。小沢一郎民主党代表の公設第一秘書の逮捕劇についてである。
今回の逮捕劇は誰が見てもまったく理不尽で、小沢代表ならずとも「非常に不公平な国家権力、検察権力の行使」だと言いたくなる。
今回逮捕の容疑は政治資金規正法に違反していると言うことであり、政治家個人の資金管理団体(陸山会)への企業献金が禁止されているのにかかわらず、それを受入れ収支報告書に記載したからだと言う。
実際は西松建設OBが設立した2つの政治団体からの献金であったのだが、この団体への資金提供が実質的に西松建設から出ていた。
だからこれは企業献金であり、第一秘書の大久保氏はそれを知悉していて個人献金として受けいれたと言う容疑だ(虚偽の記載容疑と言う)。
実は実際の政治資金規正法は完全なザル法で、確かに企業献金は政治家個人には禁止されているが、一方政党支部への企業献金が認められている。
だから政治家(実際は秘書)は献金を受けた場合は、個人の場合は個人の資金管理団体(陸山会)で受け入れ、企業献金の場合は(岩手県の)政党支部で受け容れる事務処理をしている。
秘書から見ると単なる事務処理の問題に過ぎず、今まではそれでまったく問題がなかった。
もっとも法律制定の主旨は特定の企業と特定の政治家との結び付けを断ち切るのが目的だったが、実際は抜け道がありこのようにして企業と政治家の関係は続いている。
そしてこれは小沢氏だけでなくほぼ全ての企業献金のある自民党、民主党の代議士が採用している方法といえる。
だから小沢氏ならずとも「なぜだ。みんな同じじゃないか」と思うわけだ。
今回の検察の説明「第一秘書の大久保氏が西松建設からの献金だと認識しながら、個人献金だと虚偽の記載をした」と言うのなら、同じ政治団体から献金を受けている、自民党の尾身幸次氏や森嘉朗元首相の場合は「西松建設からの献金」だとの認識がなかったのかという問題が残る。
小沢氏(実際は秘書)だけが西松建設の献金だと知っていて、尾身氏や森氏は知らなかったと言うのだろうか。
これに対する検察の説明は「小沢氏への献金の額が突出していたから」だと言うが、これはおかしい。
なぜなら法的には額の問題ではなく「企業献金との認識があったかなかったか」だけが問題になるはずだ。
00年から06年までの間に、小沢氏に9千万円、自民党の尾身氏に1千2百万円、森氏には5百万円の献金があり、また二階俊博経済産業相の約800万のパーティー券を購入したこと分かっている。はたしてこの金額のどこで逮捕者と非逮捕者が別れるのだろうか。
まったくの検察のさじ加減だと言うのは理解できない。
当初私は検察がよく行なう別件逮捕かと思った。単なる書き間違いでは微罪でわざわざ逮捕するような事件ではない。本当の目的は贈収賄事件を立件しようとして、大久保氏を別件逮捕したのかと思ったのである。
しかしこれはありそうもない。小沢氏はかつては自民党道路族のドンだったが、今はそのような立場にない。岩手県内ならともかく東北全体について影響力を行使することはできそうもない。
西松建設としたら二階俊博氏のような、現役の自民党道路族で経済産業相に働きかける方がはるかに効果的なはずだ。
はっきり言って今回の逮捕劇は自民党と検察がタッグを組んでネガティブ・キャンペーンを実施したとしか思われない。どうやっても犯罪を立件するのは不可能と思われるが(虚偽の記載と言うなら尾身氏や森氏や二階氏の秘書も逮捕しなければ筋が通らない)、それまでの間民主党小沢代表の評判を落とすことができる。
自民党としては小沢氏が評判を落としている間に選挙を行ない、選挙が終わったら証拠不十分で大久保氏を釈放すると言う筋書きが見え見えだ。
日本においては従来アメリカで常識として行なわれているネガティブ・キャンペーンは品がないとして嫌われてきた。
しかし今回の逮捕劇はアメリカ仕込の選挙戦術で、選挙もグローバル化が進んだとの印象を深くした。
自民党にとってはこうでもしないととても選挙に勝てないからだが、やはり品のなさは否めないと私は思う。
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