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(21.3.29) 中谷巌氏の深い懺悔

1285001_2   中谷巌氏といえば、竹中平蔵氏が現れるまでは改革派の急先鋒として知られ、細川内閣の経済改革研究会のメンバーとして活躍し(1993年)、その後小渕内閣の経済戦略会議のメンバーとして構造改革の提言をまとめる作業に携わっていた(1998年)。

 その後は同じく経済戦略会議のメンバーだった竹中平蔵氏が小泉内閣の閣僚として構造改革、規制撤廃の最前線に立つようになったが(2001年)、私は中谷氏は相変わらず構造改革論者として活躍していると思っていた。

 その中谷氏が改革派としての旗を降ろしたと教えてくれたのは、四季の道の百科全書Googleおじさんである。
山崎さん、文芸春秋3月号で、構造改革の急先鋒だった中谷巌が論考『竹中平蔵君、僕は間違えた』と懺悔し、転向してしまった」と言う。

 とても気になったので中谷氏の最新の本「資本主義はなぜ自壊したのか」を購入して読んでみる事にした。

 ここで中谷氏は次のように今まで彼がたたえてやまなかった新自由主義グローバル資本主義)を否定していた。

グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、・・負の効果をもたらす主犯人でもある。そしてグローバル資本主義が自由を獲得すればするほどこの傾向は助長される

改革は必要だが、その改革は人間を幸せにしなければ意味がない

 しばらく前まで「改革なくして成長なし」と言っていたのだが、たとえ成長しても富の偏在化が助長され、地球環境が破壊されて汚物のような川のほとりに住民がすんだり、白熊やアムール虎が生息できなくなるようでは何の意味もないと気付いたとという。
全てにはバランスがある

 分けても中谷氏を悩ましたのが富の偏在で、たとえばゴールドマン・サックスの従業員の世界平均給与が7000万円(アメリカ人だけでないなのに対し、一方で健康保険にも入れないで医者にかかれないアメリカ人が約5000万人全体の約15%)にも及ぶ事実である。

 これを新自由主義は正しい競争の結果だという
これまでアメリカの金融資本はグローバルに規制緩和を推進し、国境を越えた資金移動を自由化し、ITを駆使した金融商品を次々に生み出して、その結果サブプライムローンという毒饅頭を世界各地に売りさばき、自らは7000万の高給を得てきた。

 中谷氏は言う。「今にして振りかえれば、・・私はグローバル資本主義や市場至上主義の価値を余りにナイーブに信じていた」
その結果アメリカにおいても日本においても中流家庭が徐々に、そして確実に崩壊していった。
社会の安定性を支える最も重要な階層は世界中どこでも中流家庭なのだが、その階層がやせ細り、世界は金持ちと貧乏人の世界になってしまった。

 たとえば日本においても年収200万円に満たない層が、ここ10年の間に200万人増加し1000万人全人口の約8%)になり、こうした層がネット難民ワーキングプアと呼ばれる層を形成し、結婚もできない。

 これは「改革なくして成長なし」といって派遣業務を大幅に規制緩和した結果であり、近時輸出産業の不振からこの派遣切りが大々的に実施された結果、ワーキングプアなる階層はますます増大している。

 中谷氏をさらに悩ましているのはモラルの低下だ。
また業者は産地偽装に走り、危険な食材を平気で消費者に提供したりするが、こえは「儲かれば何をしても良い」という新自由主義の悪しき結果だと中谷氏は言う。
金を稼げる人間が一番偉いんだ。だから何をしてもいい。だまされるやつは馬鹿さ

 たしかにアメリカの自由主義の戦士達のモラルは人間としては最低で、メリルリンチAIGの高級幹部は公的資金をボーナスとして配布して恥じることはないし、自分達が販売した金融商品が焦げ付いても責任を取ることはない。
屑のような人間が最高の給与を得る世界はジャングルのおきてのような世界じゃないか」中谷氏の反省である。

 日本においても堀江貴文氏村上世彰氏といった胡散臭いファンドマネジャーが闊歩し、「それが資本の論理だ」と嘯いていたのがついこの間のことだ。

 中谷氏の深い懺悔は「バランスを欠いて一方的に市場絶対主義を推進したことだ」という。
個人の欲望を最大限に許して、それで自然調和が図られるわけがない。しかし新自由主義はあらゆる規制を排除して市場に任せろという。

 その結果強欲な市場戦士と200万円に満たないワーキングプアの世界になってしまい、日本を安定させていた良き中流社会が消失してしまった

私はこんな日本を作るために構造改革を推進してきたのか
中谷氏の懺悔が続く。

 

 

 

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コメント

中谷巌著「資本主義はなぜ自壊したのか」は長らくツン読状況でした。タイムリーに発行されたこともあって、経済書には珍しくベストセラーになっていますね。373Pもあってはすぐ辟易してしまった。転向の理由と経緯を経済、宗教、文化、哲学など幅広い分野から記述。後付けならなんとでも言えるよ!。曲学阿世と言ったら辛口かなあ?。
しかし、第七章「日本再生への提言」は精読しておきます。なぜなら現代型貧困の解決策に触れているからね。格差拡大して日本の相対的貧困率(2005年前後)は14.9%で、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中ワースト4位(本書ではなぜか2位?)。このような現代型の貧困の解決策として、ベーシック・インカム(B・I)がありますが、このことも載っています。(アメリカの貧困については、岩波新書 堤未香「貧困大国アメリカ」読了)
中谷巌は、麻生首相の有識者会合のメンバーとなっていますが、提案内容から察するとこの第七章が下敷きになっていますね?。提案内容というのは、「まず消費税を20%に上げる。そのかわり定額給付を国民一人当たり20万円に引き上げる。つまり還付つき消費税ということ。消費性向の低い中高所得者層から、消費性向の高い低所得者層(貧困層)に再分配する。」
麻生首相は、この提案については採用せず、伊藤元重の「贈与税減税」を検討する値打ちがあると表明しました。あのリチャード・クーも今や復権なり、麻生首相の経済ブレーンですが財政出動として公共事業投資や恒久住宅投資を提案しています。両者はエコノミストとして面目躍如たるものがあります。一方、構造改革派では、竹中平蔵は参加を拒絶し、ロバード・フエルドマン一人だけでしたが記事はなし?。
竹中平蔵ですが、プレジデント4月号「混迷経済の処方箋」で、構造改革の継続とさらなる改革「1.法人税実効税率40%→20% 2.羽田空港を国際空港に 3.東大(国立大学)の民営化」を提案しています。内容からして凋落する一方ですね!。アメリカへ住民異動手続中という噂もあります。野村総研でリチャード・クーと一緒だった植草一秀は、ブログで竹中批判を一休みして小沢擁護に必死です。小沢首相の経済ブレーンになれるかどうか?。

今日のWalking、鎌取→平山→平和公園→泉公園→鎌取 20k 桜はまだでしたが、カタクリの群落には十分堪能、他にニリンソウ、イチリンソウ、タチスボスミレ、コスミレを見ました。わが泉谷公園のカタクリはどこに咲いているのでしょうかね?。小谷橋から入園して左手の竹囲いの中かと思っていたのですが、一株もありません?。

投稿: G爺 | 2009年3月29日 (日) 22時33分

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