(21.1.4) 人口減少下の日本の将来
(国連人口基金 世界人口推移グラフ)
最近出された厚生労働省の「人口動態統計の年間推計」によると08年度中に日本の人口は約5万1千人減少し、これは過去最大の自然減だと言う。
すでに日本の人口は21世紀に入りほぼ12,700万人で停滞していたが、ここに来て本格的な減少が始まったことになる。
この人口減少に対して世の中は悲観論一色になっている。65歳以上の高齢者が現在は4.5人に一人だが、今世紀後半には2.5人に一人になって「少ない生産年齢人口でどうやって医療・福祉の増大に対応できるのだろうか」と厚生労働省は大騒ぎだ。
実際人口減少のスピードは今後とも速まることは確実で、その結果高齢者の割合が増えるのもそのとおりだが、しかしだからと言って日本の将来が暗黒と言う訳ではない。
物事には必ず2面性があって、ある事象が発生したときに全てが悪かったり、良かったりすることはない。コインには両面がある。
人口が減少すると良いことはいくらでもある。
① 新規に住宅を取得する必要が少なくなる。
通常子供が一人か二人なので、子供は親の住宅を引継ぐことが可能になる。このため住宅を購入するための資金を生活費に当てられる。
これは大きい。私は自分の住宅確保のために会社から借金をして、それを毎月15万~20万、約20年間にわたり返済してきた。その費用を生活費に当てられたらどんなに生活に余裕があったかとしみじみ思う。
② 大学・大学院等への入学がたやすくなる。
すでに大学は数値的には全員入学が可能で、今後は大学側が学生を集めなければ倒産してしまう。いままで好き勝手に上げてきた授業料は傾向的に低下するし、大学は始めて学生にまじめに授業をするようになる(実際は奨学金の拡充と言う形で、すでに授業料の低下が始まっている)。
③ GDPを増加させる必要がなくなる。
現在はGDPが増加しないと社会が崩壊するような騒ぎをしている。たとえば中国は「新規に1000万人分の雇用を創出するために年8%の経済成長が必要」と言っている。
これは逆も成り立って「新規に○○人退職するために、年○○%経済縮小が必要」と言うことになる。
GDP信仰は人口増加社会で成り立つ神話に過ぎない。
実際は老人人口が増えると衣食住にかける費用が少なくても生きていけるので、GDPが減少しても苦にならない。
④ 道路や公共施設を作る必要がなくなる。
道路が必要なのは人口が増加し、かつ自動車が増加するとの予測の元に作るのだが、実際は交通量は都市の一部を除いて減少する。従って道路は自民党道路族の利権のためにのみ必要ということになる。
発電所、通信網、上下水道、飛行場、新幹線等のインフラもこれ以上拡充する必要はなくなり、メンテナンスだけで済む。
古代ローマの遺産で生活した中世のようなものだ。
⑤ 自然環境が改善される。
工場や家庭からの汚染物質の排出が少なくなり、河川が浄化される。また農村部や山村部は人が大幅に減少するので自然がそのまま残される。二酸化炭素排出問題も自然に解決する。
⑥ 世界に先駆けて高齢化社会のモデルが作れる。
現在人口が減少に転じた国は日本のほか主としてロシアを中心とした旧社会主義国だが、いづれ全ての国で人口は減少に転じる。
今世紀は資源や食糧や環境がネックとなり、人口減少の世紀となる。その時に人口減少下の日本モデルを世界に提案することが出来る。
これだけ人口が少なくなると好ましいことがあるのだから、医療・年金で灰色の未来を描くのは間違いで、ばら色ではないがせいぜい中性色というのが妥当な線だ。
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