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(21.1.23) 金融危機とポンドの凋落  ポンドは生き残ることができるか

125pxflag_of_the_united_kingdomsvg1  英国ポンドへの信任が揺らいでいる。一部にはポンド危機という言葉まで使用されている。イギリス経済の変調は著しい。

 ほぼ1年半ほど前まで1ポンド250円とわが世の春を謳歌していたポンドが、とうとう123円と半減してしまった。
この間ユーロも170円から115円になってしまったが、かつてはあれほど開いていたユーロとポンドの価値がほぼイーブンになってきた

 イギリスが1992年欧州通貨同盟から抜け、ポンドを守ると宣言してから18年、ついにポンドはユーロに追いつかれたわけである。

 イギリスは伝統的にバランサーとしての位置を保とうとしてきた。ヨーロッパとアメリカの間に立ち、あるときはEUの一員として振る舞い、あるときはアメリカとアングロサクソン同盟を結ぶ。

 そうすることができたのもイギリスがポンドを守り、世界各国からポンドが信任されていたからに他ならない。
マーガレット・サッチャー首相がビッグバンと称してロンドンをもっとも自由な金融市場にしてから、世界の資金は確かにロンドンに集中した。

 毎年巨額の貿易赤字を出し、経常収支がいくら赤字でもそれに見合う直接投資の受入れがあり、GDPは15年以上に渡って拡大し続けてきた。
有り余る資金を得てイギリスの金融機関は気前よく融資や証券投資に走り、金融機関の資産規模はGDP対比約8倍になってしまった。アメリカの金融機関の資産規模が約4倍だから、アメリカの金融バブルよりすさまじい。

 住宅価格は2000年から2007年までに約3倍値上がりしたが、この間のアメリカの住宅価格の値上がりは2倍だから、イギリスの住宅バブルはアメリカを凌駕している。

 今思えばイギリス経済崩壊の兆しは07年9月の住宅金融機関ノーザンロックの取り付け騒ぎから始まったことが分かる。
ほとんど急にノーザンロックは市場から資金調達ができなくなった。あわてた政府は250億ポンド(約3兆円)の資金を投入し、預金者の預金を全額保証することでこの危機を切り抜けたが、08年2月にはノーザンロックを国有化した。傷口が深く今後どこまで資金投入が必要になるか分からなかったからである。

 当時はこれが世界金融恐慌の始まりだとは、ほとんど誰も気づかなかった。イギリス経済は順調そのものだったし、ノーザンロックは特別に問題があった金融機関で、イギリスの金融制度はゆるぎないと思われていた。
ダーリング財務相は「問題はノーザンロックだけ」と断言していた。

 誰の目にも明確な形で金融恐慌を意識させたのは08年9月のアメリカのリーマン・ブラザーズの倒産だったが、それとても与謝野経済財政担当相は「ハチにさされたようなもの」程度の認識だったことを思い出してほしい。この時期でさえ、まだ十分世界金融恐慌の認識はなかったわけだ。

 しかしその後アメリカのシティグループバンカメが公的資金の投入でかろうじて生きながらえているのを見て、市場はあることに気づいた。
本当に経営がおかしいのはアメリカの金融機関よりイギリスではないか。イギリスの住宅バブルはアメリカ以上だ。それに最初に倒産したのはノーザンロックだった

 その時は急激に来るものだ。1月19日、イギリスの大手金融機関ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドRBS)が280億ポンド約4兆円)の損失を計上したのを見て市場はパニックになってしまった。
やはりそうだ。資産の棄損はシティより悪い
政府はRBS70%の株式を取得して支援に乗り出したが市場はまったく信用していない。

 次の倒産予備軍はどこか。ポンドは最安値を付け、次のターゲットとして市場に狙われたバークレーズの株価は25%余り低下した。

 今後イギリスのポンドはどうなるのだろうか。20世紀後半、イギリスはマーガレット・サッチャー首相の孤軍奮闘で、ポンドをユーロより価値ある通貨としてきた。そのビッグバンといわれた金融の自由化が皮肉にもポンドの首を絞めてしまった
グリーンスパンでさえ止めることのできなかった市場の暴走が、アメリカ以上にイギリスにおこったからだ。

 確実にいえることは、今後イギリスの大手金融機関の損失は傾向的に増大するだろうということだ。それを見て市場はポンドを売り、ポンドもまた傾向的に減価する。近い将来ユーロより価値が低下すればイギリスはポンドを守る気力がなくなる。
これじゃ、ユーロの方がマシじゃないか

 イギリス国民は金融機関が倒産するたびに逡巡し、ため息をつきながら次第にポンドを諦めるだろう。そして最後には、イギリスはユーロ圏の一員として静かにフランスとドイツと肩を組んで暮らすことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

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