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(21.1.17) 中国経済の現実 GDPはどこに消えるか

125pxflag_of_the_people27s_republic  実に興味深い論文が1月16日の毎日新聞に掲載された。「試練の2009年を迎えた中国」と言う特集の寄稿者の一人上海交通大学国際公共事務学院長の胡偉氏の論文である。

 この論文の興味深さは、政治的プロパガンダ学者としての良心がないまぜになって一つの論文の中に記載されていることにある。ほとんど水と油と言っていい。

 最初と最後は中国政府のプロパガンダそのものだ。
中国政府は今年の国内総生産(GDP)伸び率について8%の見通しを示した。・・・・・・世界経済は一体化し、中国だけでは発展できない。しかし中国は他国に比べ、世界での金融依存度は高くない。
さらに政府は2010末までに総額4兆元(53兆円)規模の景気刺激策を発表し、内需主導の経済成長方針を示した

また「指導部の基盤は強固なものとなり、経済情勢を十分制御できるようになった。景気刺激策で8%成長を維持するに違いない

 これは中国政府発表のプロパガンダそのものだが、自身が中国政治学会常務理事という高い地位を得ている以上、政府方針を批判できないのは仕方がない。

 しかし胡偉氏は「なぜ8%の成長が必要か」の説明で従来の政府見解を大きく逸脱して学者としての良心をのぞかせた。

中国では腐敗や失策、公費の無駄遣いなどによって経済損失が生じる。正確な損失額の算出は困難だが、GDPの7~8%と言われる。
このためGDP伸び率が8%を下回れば、庶民は成長を実感できず、マイナス成長と感じるかもしれない

 信じられるだろうか。この説明は従来の中国政府の説明とはまったく異なる。
中国政府の公式発表は「毎年1000万人近くの新規労働者が生まれる。この人たちの雇用を確保するために最低でも8%の成長が必要だ」と言うものだ。

そうだったのか!!」私は思わず声に出してしまった。
胡偉氏の説明によって今までどうしても分からなかったある疑問が解けたからだ。
それは「中国は毎年10%以上の成長をしているのに、新規大卒者が就職できずその就職率が最近の調査で70%程度になっているのはなぜか」という疑問だった。
2008.4.15 NHKの今日の世界で『昨年大学を卒業した学生の数は495万人。政府の研究機関である中国社会科学院はこのうちおよそ30%にあたる144万人が就職先を見つけることができなかった』と放送している

 日本の過去の事例を知っているものにとって、この中国の現実はミステリー以外の何者でもない。私が大学を卒業したのは昭和45年であったが、当時は高度成長の真っ盛りだった。
労働市場は完全な売り手市場で、私自身4社からの内定を得ていた。さらにいくつでも内定を得られそうだったが、そうしなかったのは断るのが大変なことに気づいたからだ。

高度成長期には労働市場は売り手市場になる。しかし中国は買い手市場で大卒者は就職がひどく困難だ。なぜか?

この答えは「GDPの成長の約8%余りを政府高官や企業のトップが懐に入れてしまい、もし成長率が10%だとすると、1000万の新規労働者に許されたパイは2%に過ぎないから」と言うことになる。

なるほど、これでは就職が困難なはずだ」ひどく納得してしまった。
中国国内での富の偏在も、高度成長下における就職難も中国の汚職体質のしからしむる所と言うのが胡偉氏の説明となる。

 本来なら胡偉氏は「そうした汚職体質を中国政府が厳しく取り締まって、より低い成長率でも問題のない社会にすべきだ」と言うべきだが、そう言わなかったのは中国の内情に精通しすぎているからだろう。

 胡偉氏は実に誠実な学者だ。プロパガンダの鎧に身を包みながら、中国の内実を教えてくれた。前後を固めても中身は真実を伝えようとする。今回の胡偉氏の論文を見てつくづくその感を深くした。

 

 

 

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評論 中国問題 経済」カテゴリの記事

コメント

面白い記事をありがとうございます。

しかし、中国は、2000年以上変わりませんね。
王朝あるところに腐敗ありですね。

強兵策に使われるはずの予算が、官僚、政治家たちの懐
に入り、列強に食うがままにされた清末を思い出します。

さて、「日本は?これほどでは無いのでは・・無いですよね。」
と期待したいところでが。

投稿: たか | 2009年1月18日 (日) 21時13分

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