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(20.12.4) 文学入門 その4 海からの贈物

Images_2   今日(3日)は河村義人さんが主催する第5回目の読書会だ。河村義人さんは本業は銀行員だが、一方で「子どもたちへのブンガク案内」という本を出版されているおゆみ野在住の作家でもある(おゆみ野walkersの「この人に会いたい」に詳しい)。 

 今回の読書会のテーマ本はリンドバーグ婦人の「海からの贈物」だった。1955年にかかれたと言うから半世紀前の書物だ。
この本を選んで報告したのはTさんだが、Tさんは建築関連のフリーのルポライターで、またおゆみ野Walkersというブログの主催者の一人でもある。
Tさんは「海からの贈物」だけでなく、リンドバーグ夫人の他の書物や、関連する書籍に目を通しており、この書物がかかれた背景説明も親切だった。

 Tさんによれば「リンドバーグ夫人は、長男を誘拐されて殺害されたこと、また有名ではあるが家庭的には必ずしもよい夫でなかったチャールズ・リンドバーグとの結婚生活でさびしかったのではないか。それがこの本を書いたきっかけではないか」との主旨の説明をしていた。

 私はいつものようにこの本のことも、リンドバーグ婦人が作家であることも知らなかった。
勿論夫のチャールズ・リンドバークのことは「翼よあれがパリの灯だ」があまりに有名なので知っていたが、当初このリンドーグ婦人の本は夫の伝記なのだろう思っていたくらいだ。

 今回はこの中の一章である「つめた貝」を読むことになっていたのだが、つめた貝の説明が長く続くので、読み始めたときはチャールズ・ダーウインの「種の起源」と同じような生物学関連の本と思ったほどだ。

 ようやく読むにしたがってこの書物が、夫の伝記でもなく、また貝の説明書でもないことが分かったが、なんとも不思議な書き出しだ。
この本のテーマは女性の自立である。
すでにウーマンリブの嵐が吹き荒れ、現在はその反省期にさしかかっている時期なので、こうした女性の自立について書かれてもさして不思議な気持ちはしない。

 しかし書かれた当時はまだ保守的な気分が強く「女性の自立などはとんでもない話」で非常に衝撃的な書物だったのだろうと想像される。

 時代に先行しすぎて読者がついてこれないと思ったときに、関係のない話で読者の興味をひきつける方法は、かつて左翼文壇隆盛の頃の右派文壇のアプローチに似ている。
山本七平氏(ペンネーム、イザヤベンダサン)の「日本人とユダヤ人」がそれで「日本人はユダヤ人と異なり水と平和はタダがと思っている」という主張で「日本国憲法が平和を守っている」という左翼の主張に挑戦した。

 リンドバーグ婦人は貝の話で私達をひきつけようとしているが、文体は重く哲学的だ。
女はいつも自分をこぼしている。子供、男、また社会を養うものとして、女の本能の凡てが女に、自分を与えることを強いる」という。
リンドバーグ婦人はウーマンリブの闘士のように「絶対平等主義者」ではなく、女性と男性の違いに注目する。

女は小出しに与えるということよりも、無意味に与えるのを嫌うのである」と与えることの意味に条件を付与する。

 そしてその与えると言う意味を深く知るために「自分というものの本質を再び見出すために一人になる必要がある」ので「少しでも自分の内部に注意を向ける時間が有ることが大切な」のだという。

 女は男性と異なり常に自分を人に与えて生きているが、それだけではダメで孤独に耐えながら常に自分を見つめることが必要だ、と言っているようだ。

 私はこの書物は歴史的な書物で、当時はこうした女性の自立を説く啓蒙書が必要だったと理解したが、発表者のTさんや何人かの女性が「これは普遍的な真理を記載した本で、それゆえ何回も重刷をかさねて読まれており、今後も長く読まれる本だ」と言ったのにはビックリした。

 Tさんによれば「ときどきぱらぱらとめくって数ページを読むと、はっとするような箇所がいつも出てきて、自分がそのときおかれている状況ごとに新たな発見がある」のだという。

うぅーん、書物は人によって全く読まれ方が違うのだ」実は私は同じ本ならば、誰でも同じように読むものだと思っていたので、これは大発見だった。
読書会に出席していると、驚くようなことが多い。


なお、河村義人さんが、本日の読書会のまとめをされているので、それを一部抜粋して掲載します。

テキストは、アン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈物』(新潮文庫)で、講師はTさんでした。

まず講師のTさんより表題作及び関連作品の紹介、著者の家族(夫は有名な飛行家でアメリカの国民的英雄リンドバーグ。子どもは5人いたが、長男は死亡)の詳しい説明がなされ、日の出貝、牡蠣、たこぶねといった浜辺で集めた貝の変遷が、新婚、子育て期、子育て後といった夫婦のライフステージの推移に相当し、読者の年齢やその時の問題意識に応じて発見がある、といった見方が示されました。

 その後で、本書は「日常生活を変えるヒントがつまった本」「たった今を生きるのに非常に役立つ本」という総括がありました。

参加者のコメントでは、「本書の中に自分の問題に対する答えなりヒントがあるように思った」とか「著者がすごいのは様々な賢人たち(哲学者・詩人・小説家など)の言葉を自家薬籠中の物としている点、」といった好意的な意見が寄せられる一方、

「哲学的・思想的な内容なので、大変読みにくかった」「テーマは『女性の自立』だが、今読むと内容的に新味はない」「作中に出てくる貝は単なる装飾品」といったやや辛口の意見も聞かれました。

 また、「初読では『いい本』だと思ったが、再読して全体にピューリタリズム(清教徒主義)が鼻につき『宗教くさい』気がした」とか「若い頃はすらすら読めたのに、年を経て再読してむずかしく感じた」といったように印象の変化に驚く声もありました。

さて、次回の日程は、来年1/14(水)13:00~(於緑図書館集会室)、テキストは柳田国男『遠野物語・山の人生』(岩波文庫)、講師は河村です。

(「遠野物語」は文語文なので、もし読みにくければ、「山男」や「山女」といった「山人」の部分だけでも結構です。「山の人生」は口語文で書かれているので比較的読みやすいと思います)

新年早々ながら、皆様ふるってご参加願います。

 

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