(20.12.31) 平成20年が終わった 世界金融恐慌の始まり
平成20年が終わろうとしている。この年は21世紀のエポックと言える歴史的な年になってしまった。この年に比肩できる年は1929年のあの大恐慌が始まった年だけだ。
チャーリー・チャップリンが街の灯やモダンタイムスで描いた失業者が街にあふれた世界が再びやってくるとは信じられない思いだ。しかし金融恐慌は確実に始まり、各国の懸命な対応にかかわらず治まる気配は一向にない。
危機はさらに進んで実体経済まで及び自動車産業は対前年比30%程度販売が落ち込んでいる。
アメリカのビックスリーはほぼ壊滅の状態で、世界のトヨタも赤字決算に追い込まれた。電子産業も鉄鋼産業も自動車産業の後を追うように業況は悪化し、世界の産業はほぼ30%程度の規模で生産縮小に追い込まれそうだ。
原油価格はひところ1バーレル147ドルまで上昇し、この年末には200ドルを越すといわれていたのに、実際は40ドルを割り込みバブル発生前の30ドルに近づいている。
土地価格は日本でも再び低下に転じたが、アメリカやイギリスでは住宅価格が日本のバブル崩壊時と同じような急激な価格低下に見舞われている。09年にかけて今一層の価格低下が起こりそうだ。
この夏まで世界の景気を牽引していた新興国も第4四半期に入って急激に業況が悪化し始めた。世界経済の優等生と見られていた中国も激しい輸出減少で輸出産業の倒産は信じられないような多さだ。
ロシアは原油価格の急落で国内企業の支援に手一杯になり、資源外交もめっきり効果がなくなった。
輸出立国は今ほとんど立ち行かなくなっている。常に湯水のように世界の商品を購入してくれたアメリカがリーマン・ブラザーズが倒産した9月以降全く振るわない。約20%~30%の規模で輸入が縮小しつつある。
日本も中国も韓国も台湾もすべて輸出産業が大打撃を受けている。
通貨は日本の円だけがドルに対し円高になっているが、他の通貨は中国元を除けば大幅にドル対比減価し、世界の資金が円に向かっている。おかげで円高は止まるところを知らず輸出産業は日本では成り立たないのではないかとの悲鳴が聞こえ始めた。
08年になぜこのような金融恐慌が発生してしまったのだろうか。すでにアメリカの住宅バブルは03年の段階で警鐘が発せられていたが、実際は07年までバブルが表面化することはなかった。
バブル崩壊がさらに4年間も延びたのは投資銀行がサブプライムローンをたっぷり含んだ不良債権を優良債権に衣替えをして証券化商品として世界に売りまくっていたからだ。
「この商品は安全で絶対に儲かるよ」資金がアメリカに還流している間はバブルは崩壊しない。
中国産のうなぎを日本産のうなぎと称して販売したのと同じようなものだが、世界の金融機関や投資家が信じきってしまったところがすごい。すべて金融工学を駆使したパッケージ商品で信じられないよう高利回りだったが、あまりに数式が複雑で誰も理解できなかったというのが実情だろう。
「販売元のリーマン・ブラザーズや商品の格付けが高いのだから信用して購入しよう。それに利回りが高いのが魅力的だ」そんなところだ。
この金融恐慌は何時まで続くのだろうか。金融恐慌は07年の住宅価格の崩壊に始まったのだから、アメリカの住宅価格が持ち直さない限り収束しない。現在まで約30%程度価格が下がったが、日本のバブル崩壊の経験からはまだまだ下がりそうだ。
住宅価格がさらに下がれば、証券化商品の価格はさらに下がり金融恐慌は収まることはない。
やはり2008年は1929年と同じで、恐慌の始まった年として記憶されるだろう。
歴史家は「人間の欲望が限界まで膨らんで崩壊した年」と言うだろう。
幸い日本人は90年代にバブルが崩壊してこうした状況は経験済みだが、今世界は日本の失われた10年を追体験し始めている。
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