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(20.12.27) ようやくIMFも目が覚めた 中国幻想の崩壊

Images5  ようやくIMF中国幻想から目が覚めたようだ。これまでのIMFの予想は常に中国経済を買いかぶってきた。
09年度の中国のGDP予想を当初は9.3%としていたが、この11月に8.5%に引き下げた。
なんとまあ高い数字だ」と私は驚いてしまったが、12月15日になって、ストロスカーン専務理事が「中国の2009年の経済成長率が5%台まで鈍化する可能性がある」と数字を下方修正する可能性を示唆した。ようやく実態がわかってきたらしい。

 これまでIMFの予想はどこか楽観的だった。11月現在で来年度の世界全体のGDP成長率2.2%増加すると予測していたが、その内訳は、先進国は▲0.25%で、新興国は+5%だ。
たとえ先進諸国がマイナス成長になっても中国を初めとする新興国が経済を支えるので世界全体としては2.2%の成長が可能と言う。
牽引役の中国がいる限り世界経済は安泰だ」そう思っていたようだ。

 しかし上記の数字は二つの意味で問題がある。先進国の経済が▲0.25%で収まるはずがなく、新興国が5%成長できるはずがないからだ。

 今自動車産業だけでも世界の第4四半期の販売台数は約▲30%の落ち込みをしている。また日本の11月の輸出統計では自動車・電子部品の落ち込みが約▲30%だ。
また、経済産業省が今日(26日)発表した11月の鉱工業生産指数速報(2005年=100、季節調整済み)は前月比8.1%の低下の94.0となり、2カ月連続の低下となった。過去最大の落ち込みだと言う。

 新しい統計が出されるたびに数値は悪化しており、08年度第4四半期(10月~12月)の各国のGDPの数字が出揃った頃は、世界全体が蒼白になっているだろう

 今世界の景気がほとんどジェットコースター並に悪化している。
こうした時に新興国だけが5%も成長できると考える方がおかしい。
ひところ中国やインド等の新興国経済は、たとえ先進国の経済が失速しても経済成長をとげると吹聴されていた。デカップリング(分離)論というのだが、この前提は中国のような新興国の経済はすでに自立していて先進国の影響を受けないというものだ。

 中国のように輸出主導型の経済で、対GDPにたいする輸出のウェイトが約35%と極端に高い経済が世界と無関係と言うのである。
貿易立国といわれる日本でさえGDPに対する輸出のウェイトは約18%にすぎない。
日本の貿易の現状をみれば、中国の輸出産業が同様の厳しい状況に置かれていることは確かだ。

 また内需拡大を目指しても、中国のGDPに対する消費の割合約35%と極端に少ない。アメリカが約70%、日本が約60%だから、国内消費を拡大することも出来ない。貧しい国民は消費など拡大しようがない。

 最後の手段は公共工事を増やして景気を拡大することだけだ。
GDPに対する投資の割合は約40%と確かに高いが、それだけで中国経済を支えるのは事だろう。
かつての日本がいくら公共投資を増やしても数%の成長がやっとだったことを思い出した方がいい。

 今、簡単な計算をしてみれば先進国経済の悪化を中国が支えきれないのはすぐに分かる。
中国は世界第4位の経済規模だが、世界のGDPに占めるウェイトは6%程度に過ぎない。先進国と言われるアメリカ、EU、日本のウェイトを加えるとほぼ65%程度になる。

 だから09年度、先進国のGDPがIMFの予想通り▲0.25%だったら、中国は3%の成長でいい。
しかし先進国経済が▲0.25%のはずがなく、たとえば1%低下したと仮定すると、世界の経済を中国が支えるためには約11%の成長が必要になり、2%低下すれば約22%だ。
数字は急速に大きくなり、中国の手に負える数字でなくなる。

 そして確実に世界経済は数%の規模(業種によっては数十%で縮小しているのだから、中国経済を含めて09年の世界経済は惨憺たるものになると覚悟した方がよい。

 

 

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評論 世界経済 金融恐慌」カテゴリの記事

コメント

■厳冬の中国経済-中国は本当の共産主義を実践すべきだった?
こんにちは。中国経済本当の厳冬期に入ったようです。それにしても、現状では格差があまりに大き過ぎるため、いわゆる一般庶民(もう日本ではいなくなりました)が大変になると思います。こうしたことを見るにつけ、改革・開放の道筋は誤っていたと思わざるを得ません。30年前に鄧小平氏が日本にやってきて、日本の経済の実力をまざまざとみせつけられたようですが、実はそのころの日本は、純粋な共産主義といってもいいくらいの社会・経済を構築していたということが見逃されたと思います。中国は、日本型共産主義を参考にすべきだったと思います。しかし、今からでも遅くはありません。いくつかの国に分裂して、経済とともに崩壊した社会の秩序を取り戻すべきだと思います。来年からの中国の動きに期待したいです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。良いお年をお迎えください。

(山崎) yutakarlsonさんのブログはよく読ませていただいています。とても参考になります。なおyutakarlsonさんのブログのURLは以下のとおりです。
http://yutakarlson.blogspot.com/2008/12/blog-post_30.html

投稿: yutakarlson | 2008年12月31日 (水) 10時08分

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