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(20.12.20) 終わりの始まり クライスラーの操業停止

 クライスラー17日、米国とカナダにある工場30箇所の操業を、19日から1ヶ月間完全に停止すると発表した。しかしナルデリ会長といえども、1ヵ月後にクライスラーが通常の操業再開をすると思ってはいまい。
次は何が起こるのだろうか」市場は固唾を呑んで見守っている。

 ホワイトハウスのペリーノ報道官13日には「金融安定化法に基づく公的資金を使用して、つなぎ融資を実施する方向で検討している」と言ったが、18日には「秩序ある破綻も選択肢の一つ」とトーンを下げた。
すったもんだの挙句米政府は19日、米自動車業界に対し、金融安定化法の資金を活用して、計174億ドル(1兆5500億円)の資金繰り支援を行うと発表した。

Click here to find out more! 具体的には、7000億ドルの公的資金枠から、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーに計134億ドルを融資し、来年2月にも40億ドルを追加融資する体制を整えた。

 これでGMとクライスラーの年末の倒産は避けられたが、ことはそれだけでは収まりそうはない。

 元々ブッシュ政権金融安定化法の7000億ドルで、ビッグスリーを救済することに反対だった。
あれやこれや検討した結果、環境対策資金の一部を使用する案でホワイトハウスと議会民主党は手打ちをしたが、上院の共和党議員によってせっかくの修正法案が廃案にされてしまった。

 再びブッシュ大統領とポールソン財務長官に玉は投げ返されたが、ポールソン財務長官の腹は決まっていたはずだ。なにしろポールソン氏は公的資金の導入を拒否してリーマン・ブラザーズを潰した男だ。
労働条件の引下げと株主責任が絶対の条件だ

 これに対しUAW(全米自動車労組)もかたくなだ。医療保険と退職後給与を含めた給与で、トヨタやホンダより約5割程度高いといわれる給与水準を引き下げるつもりはさらさらない。
2011年度の労働協約改定日までは、引下げなど応じられない

 今回の資金援助と引き換えに、ホワイトハウスUAWはどんな取引をしたのだろうか。あるいは単に生命維持装置をつけてオバマ政権に引継いだだけだろうか。

 次の市場の注目はクライスラーの本格的な処理に移ってきた。
元々ビッグスリーといっても、クライスラーは世界自動車販売台数がGMの4分の1程度で、日産やホンダより少ない。
従業員数もGMの約半分の5万人だ。
そして何より株式の約80%を投資会社のサーベランスが保有している。

 歴史的には何回も経営危機に陥り、アイアコッカによる奇蹟の復活があったものの、その後業績が低迷して1998年にはダイムラー・ベンツ社に買収された。
しかしそれでも業績が回復せず2007年5月にクライスラー部門は投資会社サーベランスに売却されている。

 そして現在、この金融危機で全く自動車が売れなくなり、11月の販売台数は対前年同月対比で約5割減少し通期では約3割減少してしまった。
こんなに売れないなら生産しても仕方がない」1ヶ月の操業停止に追い込まれたわけだ。

 アメリカの自動車市場が3割も縮小している中で、整理淘汰が最も容易な企業はどう見てもクライスラーだ。
労働者が最も少なく、株主はサーベランスが8割の大株主だ。生産量も少ないから関連する周辺会社に与える影響も少ない。

 おそらくホワイトハウス(ブッシュ政権もオバマ政権も)はクライスラーを事前調整型の破算法申請(連邦破産法11条)に追い込みたいはずだ。社債は返済不能株は無価値、そして金融機関の債権を大幅にカットして、賃金をトヨタ並にした後、残った工場と労働者をGMに引きつがせようとするだろう。

 客観的に見てクライスラーは生き残る条件はない。だからこの1ヶ月の操業停止は時間稼ぎのための「終わりの始まり」なのだ。

 

 

 

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評論 世界 アメリカ経済 自動車」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、某メーカーに勤める30代のものです。
ここ1ヶ月前ぐらいから、本ブログの読者になりました。
いつも、面白い記事をありがとうございます。特に各国情報や経済記事は、
しっかり調べられていて、いつも勉強させていただいております。

大新聞のように、偽善的で、真実をおおい隠すような書き方に、ならずに済むのが
このようなブログ形式ですが、かといって、一部ブログに見られるような、根拠無く
煽ったり、感情的になっていないのが魅力だと思います。
 要は、冷静で、客観的に、AだからB、BだからCになるだろう、という書き方が、
安心できるのだと思います。

さて、ビッグ3をはじめとする現在の経済諸問題は、必ず、輸出立国を掲げて生きてきた
日本にも関係してくるはずなのですが、最近のテレビや新聞はどうなっているのでしょう?
犯罪や食品偽装などの社会問題も重要ですが、それがトップニュースというのは、いかがなものか、
と思われます。
パラダイムシフトをしなくては成らない時期に来ており、その先はどこに行くのか、
今の若者は必死に探ろうとしていると思うのですが、テレビはあいかわらずの低レベル
番組一色ですね。

そのような意味でも、これからは、ブログが、ミニコミとなって行く時代になるのだと思います。
本ブログの記事は、期待しております。

(山崎) お便りありがとうございます。実は私も現在の状況はパラダイムシフトだと思っており、それを確認するためにブログを書いています。各国の経済状況を調べているのもそのためで、最終的には日本がどうなるのかを確認したいと思っています。
期待に答えられれば本当に幸いです。

投稿: たか | 2008年12月20日 (土) 09時47分

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