(20.11.7) オバマ大統領のチェンジが始まる
2008年のアメリカ大統領選挙は一般の予想をはるかに上回るオバマ氏の圧勝で終わった。事前の世論調査でオバマ氏は10%程度のリードを保っていたが、投票結果もほぼ同様の結果となったのは、64%(従来は50~55%)と言う高い投票率に支えられたものといえる。
実は今回の選挙はアメリカ人にとって非常に大きな岐路選択の選挙だった。
マケイン氏を支持することはブッシュ政権の継続を意味し、戦争と経済破綻の道につながるが、一方オバマ氏を支持することは敗戦と経済再建を意味するからだ。
オバマ氏は「イラクから16ヶ月以内に撤退する」と表明しているが、16ヶ月でイラクが安定政権になることはありえない。そのような状況でアメリカ軍が撤退すると言うことは、アメリカのベトナムに次ぐ2回目の敗北を意味する。
「しかし、それでもいい。もう疲れた。イラク人のことはイラク人に任せて、アメリカは世界の警察官を降りる」
これは単にイラクだけでなく、アフガン、北朝鮮等従来アメリカがかかわってきたあらゆる戦場からの撤退を意味する。撤退戦が一旦始まれば、全ての戦場から撤退することになるのは世の常だ。
アメリカは19世紀のモンロー主義の時代に逆戻りし、世界の舞台から降りる決心をした。
それがオバマ氏の外交政策だ。
したがって日本は日米同盟が実質的に終了することを見越して、普通の国家として自立する覚悟が必要になる。オバマ大統領のアジア政策は中国と日本の等距離外交になり、中国問題ではアメリカの支持は全く期待できなくなるからだ。
「日米同盟が最も重要な同盟関係」だった時代は終わろうとしている。
一方経済については、特に大型の財政支出を伴った大きな政府が実現するだろう。緊急の課題は青息吐息の金融機関の救済と、ビックスリーを初めとする実体経済の救済だ。
アメリカはこうした資金を赤字国債を発行してまかなうことになるから、傾向的にドル安円高が進むことになりそうだ。
さらにオバマ氏は医療保険の改革を唱えており、日本のように全アメリカ人が加入する保険制度の創設を公約とした(現状はそれぞれが自分の経済状況と相談して民間会社と保険契約を結んでいる)。
これはアメリカ国民としては僥倖だが、日本の医療制度がそうであるように莫大な金額の国庫負担が必要になる。
ここでも赤字国債の増発が必要になりそうだ。
こうした赤字国債の販売先は世界に2国しかない。日本と中国だ。
「国債の暴落がいやなら、もっと国債を買え」
日本は自主防衛の資金手当てのほかに、大量に発行する赤字国債を売りつけられることで、青息吐息になりそうだ。アメリカ国債は利回りはともかく将来的にはドル安が避けられないので、とどまるところなく減価してしまう。
この点は中国も同様で、世界最大の債権国としてはドルが紙くずになることは耐えられないだろう。しかも両国が買い支えるとしても限界がありそうで、いずれはアメリカ国債とドルの暴落を予想しておかなくてはならない。
オバマ新大統領のチェンジとは、結局戦争の停止と大きな政府の実現、その結果としてのアメリカ国債の増発と、それを購入させられる日本と中国のがまんくらべになりそうだ。
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