(20.11.6) 音楽著作権はいかにして保護されるのだろうか 小室哲哉氏の事例
4日に小室哲哉氏が逮捕された事件は、アメリカの大統領選挙結果と同じ程度のニュースバリューで報道合戦がされている。
私などは小室哲哉氏と聞いて、著名な評論家の小室直樹氏と間違えてしまうほど芸能音痴なのだが、さすがに安室奈美恵の作詞・作曲を手がけてレコード大賞をとらせたと聞けば、ようやくイメージがわく。
「ああ、あのレコード大賞を取って、紅白歌合戦のおおとりを任せられて、泣いて歌っていた安室某の作詞・作曲家か」
私の知識は非常におぼつかないものだが、平成7年から10年にかけ、レコード大賞を4年連続でとり年収20億円だったそうだから、日本を代表する才能の一人であったことは間違いない。
なにか音楽界のイチローのような感じだ。
この小室哲哉氏が音楽著作権の譲渡で、5億円の詐欺容疑で逮捕されたのだが、報道を見る限りとても不思議な気がした。
「音楽著作権はどのように保護され、譲渡されるのか」と言う問題についてである。
ようやく分かったのは「音楽著作権と言うものは株や債券や不動産のように市場で流通することはほとんどないらしい」と言うことだ。
① 作曲家や作詞家は自身の音楽著作権を、契約先の音楽出版社に譲渡する。
② 音楽出版社はこの音楽著作権を日本音楽著作権協会に預け、著作権使用料の徴収を委託する。
③ 日本音楽著作権協会は徴収した著作権料(印税)を音楽出版社に支払い、さらにその一部が作曲家や作詞家に印税として支払われる。
これがほとんどのケースであり、したがって作詞・作曲家の小室哲哉氏が音楽著作権を所持しそれを譲渡するようなことは常識的にはありえない。
もっとも音楽著作権の市場性の確保と所有者の権利を保護するために、文化庁に登録すると言う仕組みがあるのだが、実態が上記のようだったためにほとんど利用されていないと言う。
「市場性がないんだから登録したって何の意味もない」
小室哲哉氏はこのような音楽業界の実情に無知な投資家A氏から5億円を詐取したのだが、その手口が「文化庁への登録」の仕組みの悪用だった。
音楽出版社が文化庁に登録しないことをいいことに、自身の企画会社との間で譲渡契約を結び、主要なヒット曲34曲を文化庁に登録した。
これで法律上はこの34曲は自身の企画会社の所有物になる。
なぜか806曲全ての登録でないが、34曲以外は全く商品価値がなかったからだろう。
今回の音楽著作権の詐欺事件は、文化庁への登録で投資者を信用させ5億円を詐取したものだ。小室哲哉氏は音楽だけでなく、詐欺の才能もなかなかのものだと感心してしまった。
ただし企業家としての才能は全くダメで、百億円近くをかけて香港に設立したといわれる会社はまたたくまに倒産した。その原因は中国市場での偽ブランド品の横行に対処できなかったからだ。
人気のCDをいくら販売しようとしても、すぐに海賊版が出て純正品は全く売れないのだが、こうした中国市場の常識を知らなかったのは、企業家として不覚だったとしかいいようがない。
音楽著作権が曲がりなりにも保護さえているのはアジアでは日本だけで、中国や東南アジアではコピー製品こそが商品になっている。小室哲哉氏は余りに中国でひどい目にあったので、日本で意趣返しをしようとして墓穴を掘ったと言うのが今回の事件の真相のようだ。
「散々中国でだまされたんだ。俺だって人をだまして何が悪い」
日下公人氏が、「中国と取引すると人品が卑しくなる」と言っていたがそのとおりの結果になってしまった。
(注)写真は毎日JPに掲載されていた映像です。
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