(20.11.28) アメリカ経済はモグラたたき 金融危機対応
アメリカ経済はとうとうモグラたたきになってしまった。大手金融機関シティグループに対する二度目の公的資金の投入を余儀なくされたからだ。
10月末に2兆5千億の公的資金をシティに投入した時、ポールソン財務長官は言ったものだ。
「これ以上の金融機関の支援は現政権では実施しない」
それから3週間後、まだ舌の根が乾かないうちにさらに2兆円の公的資金の投入と、証券化商品を30兆円までFRBと政府が保証することが必要だと言う。シティはすでに6兆円の評価損を計上しているが、これでシティの総資産200兆円のうち、30兆円が今後焦げ付く可能性があることが分かった。
アメリカ政府は次々に金融対策を打ち出しており、25日にはFRBが総額77兆円の金融対策を発表している。
政府系住宅金融会社2社が保証しているMBS(住宅ローン担保証券)を最大50兆円、2社が貸し出した住宅ローンを最大10兆円を買い取るのが主な柱だ。
政府系住宅金融会社の焦げ付きはどうやら最大60兆円規模らしい。
一体何時になったらこの金融恐慌から抜け出せるのだろうか。その答えは「住宅価格が安定し、さらに上昇するようになったら」である。
アメリカ経済ほど住宅価格にディペンドした経済はない。他に同じような経済構造をしているのはイギリスだけである。
アメリカのGDPに占める個人消費の割合は約70%だが、これは日本の60%より10%も高い。一般に過剰消費と言われているが、アメリカ人といえども金がなければ消費を増やすことは出来ない。
アメリカ人がおおらかに消費を拡大できたからくりは、ひとえに住宅価格が上昇していたからである。
アメリカでは住宅価格から住宅ローンを差し引いて余裕があれば、金融機関から差額の融資がうけられる。これを元手に生活費や家電製品や自動車を買いまくっていた。
日本も中国もおかげで輸出が大幅に伸び我が世の春を謳歌させてもらった。
アメリカの住宅価格は右肩上がりに上昇し何時までも上昇するものと世界中が思っていたら、都市部では06年にピークをうち、その後低下し始めた。バブルがはじけた訳だ。
サブプライムローン問題が表面化したのはそれから1年後だが、元々値上がり益以外に返済財源がないのだから焦げ付くのは当たり前だ。
その後のアメリカ経済は奈落の底に落ち始めた。
サブプライムローンでたっぷり儲けていたリーマン・ブラザーズのような投資銀行は次々に破綻し、今はシティのような商業銀行が破綻し始めている。
「一体どこまで落ちるのだ」
住宅価格は都市部で30%程度、その他は15%程度低下した。バブルがはじけた場合の好事例が日本にある。日本では土地価格が最高時から70%程度まで低下している。
アメリカでは住宅価格の代表的な指数として大都市部住宅価格の推移を表すケース・シラー指数が使用されている。これによると2000年ごろまで100前後であった指数がその後急上昇し、2006年は190程度になってその後急反落している。
バブル前に戻るのだと考えればピーク時の半分程度にはならないとおかしいので、住宅価格はさらに20%程度は落ちてもおかしくない。
やはりアメリカのバブル退治は道半ばで、今回はシティだが、さらにバンク・オブ・アメリカもJPモルガン・チェスも控えている。
アメリカ経済はこれからもモグラたたきが続くと考えなくてはならないだろう。
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