(20.11.14) GMワゴナー会長が居直った GM倒産の危機
GMのワゴナー会長がとうとう居直ってしまった。
「政府の支援がなければ来年前半には資金がそこをつく」と先日(7日)GMが倒産前夜にあることを会長自ら宣言したのだ。
おかげで市場はパニックになって、昨年の今頃は30ドルを越える株価水準だったのに、この11日には3ドルを割り込んでしまった。
第二次世界大戦のときの株価と同じだそうだから、時代が一気に60年以上も遡ったことになる。
ドイツ銀行などは「政府支援を受けたとしても実質的な破綻に近い状態になるのだから、GMの予想株価は0ドルだ」とにべもない。
GMと言えばビックスリーの中のトップ企業で、アメリカ製造業の代表のような企業だから、日本で言えばトヨタが倒産するようなものだ。
しかしブッシュ政権はビックスリーの救済にはあまり乗り気でなく、「GMの金融子会社から支援の要請があれば、金融安定化法の枠内で対応してもよい」という態度だ。
これでは民主党としては気が気じゃない。もたもたしてオバマ政権が出来る来年1月を待たずにGMが倒産でもしたら、金融恐慌以上のパニックに陥ってしまう。
さっそく民主党の実力者ペロシ下院議長が「経営破綻を回避するため、金融安定化法に基づく緊急支援を実施すべきだ」とブッシュ政権の尻をたたいた。
オバマ次期大統領も「自動車産業は米国製造業の中核」だと言ったが、問題はこの年末をGMがどのようにして乗り切れるかに移ってきた。
GMの10月の新車販売台数は対前年比45%もダウンし、5四半期連続で赤字で、累積赤字は7兆円に登っている。手元資金は1兆5千億円あるが、年末にも底をつくかもしれない。
しかし年末まではブッシュ政権が続き、オバマ氏としても直接的な手段は取れない。
自動車産業向け政府保証融資枠250億ドル(2兆円強)が有るものの、これとてもブッシュ政権の腹一つだ。
「ブッシュとオバマの狭間でGMが倒産するかもしれない」市場は固唾を呑んで見守っている。
さらにGMに見放されて倒産同然のクライスラーをどうするかという問題も残っている。
フォードは相対的にはマシだが、販売の落ち込みは他と変りがない。
アメリカはこの自動車産業の苦境にどのように対処するだろうか。私の予想はアメリカ政府はGMとフォードは助けるがクライスラーは実質的に倒産させると言うものだ。
アメリカの自動車市場は確実にパイが縮小しており、対前年比30%減が続いている。3社が生き残る条件にはない。
GMについては金融安定化法70兆円と、政府保証融資枠2兆円を使用して年末を乗り切らせ、さらにオバマ政権になれば各国にアメリカへの自動車輸出の自主規制を求めて、国内市場の囲い込みを図ることになるだろう。
「アメリカ市場は国内メーカーのためにある」
あの1970年後半の自動車摩擦の再来である。幸いに日本のメーカーはその時の経験を生かし、トヨタもホンダもアメリカ企業になりきっているから、アメリカ国内での締め出しはなさそうだが、そのようにしても小さくなったパイの争奪戦は厳しいだろう。
結局アメリカのビックスリーの時代は終わり、来年度はビックツーになっている可能性が高い。
なお、本件と関連する記事はカテゴリー「経済 アメリカ経済」に入っております。
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コメント
経済音痴の梅爺は、次郎さんのブログに、『そういうことか』と啓発されています。
政治と経済は、持ちつ持たれつであるとは思いますが、煎じ詰めれば、経済先行、政治後追いの構図ではないかと勝手におもっていますが、マチガイでしょうか。自分が国を取り仕切っていると考えている政治家の先生には、失礼な話しかもしれませんが・・・
(山崎) コメントありがとうございます。私は梅翁さんのブログが好きで、最近の現生人類の歴史なんかとても面白いです。自分の得意分野以外は他の人のブログを見て「そういうものか」と思うのは誰でも同じです。
投稿: 梅爺 | 2008年11月14日 (金) 09時58分