(20.11.10) 再びデフレの時代が始まった
ひところあれほど騒がしかった物価の上昇を聞かなくなった。ガソリン価格は日を追って低下しており、今では120円台になっている。
この夏ごろは原油価格は1バーレル147ドルまで上がり、年末には200ドルも突破すると言われていたが、実際は60ドル程度になっている。
この先もさらに低下しそうで50ドルが視野に入ってきた。
穀物価格は2007年から急騰したが、いずれも本年度に入り急落しており、まだ上昇前の2倍程度の価格になっているものの、以前の価格に戻るのも時間の問題だ。
たとえば小麦の値段は長らくトン当たり100ドルから200ドルの間を推移していたのに、一時期440ドルになったが先月は237ドルまで下がってきて、さらに低下しつつある。
小麦の価格上昇期にはパン業界はパニックになり、パン製品は一斉に価格があがり、大好きなぶどうパンが160円から230円になったときは目を剥いた。
「もうぶどうパンも食べられない」
しかしそうした心配も杞憂に終わりそうだ。
再びデフレの時代に戻ってきた。
私のように定年退職者は所得が決まっているのでインフレに弱い。対応策として自動車を処分してもっぱら自転車に変えたり、ジャスコのトップバリュや6時以降の値下げ時期に買い物をするようにしていたが、これで一息つけそうだ。
インフレからデフレへの転換は実にドラスチックだった。アメリカの3月のベア・スターンズの倒産、9月のリーマンブラザーズの倒産が契機であり、世界の投資家が震え上がった。
「まずい、全ての投資の手仕舞いをしろ」あらゆる投資資金が市場から引き上げられて、残ったのは実需だけになってしまった。
気がついてみれば穀物も石油も1年前に比較してそんなに需要があるわけでない。中国やインドが経済成長をとげていると言っても、世界全体の石油や穀物の需要が1年で2倍や3倍になるはずがない。
バブルがはじければ元に戻るのは世の常だ。
資金は最も安全と見られている円に殺到している。
アメリカはオバマ大統領になり大きな政府のもと赤字国債を増発するから、ドル安になる。
ヨーロッパは弱い輪がほころんで、アイスランド、ウクライナ、ハンガリーが倒産しそうなので、ユーロ圏もかなり危ない。
中国元は魅力的であっても市場性がないからなかなか入手できない。
「やはり、円しかないじゃないか」世界の趨勢がそうなっているので、円高はとどまることがないだろう。
少し長いスパンで見ればドルもユーロも50円程度まで円高になりそうだ。穀物も原油もドル表示での価格がさがり、さらに円高のメリットで価格が下がるのだから、物価は加速度的に低下しそうだ。
すでにスーパーやデパートでは一部製品で円高還元セールが行なわれているが、そのうちあらゆる商品の値下げ競争が始まるだろう。
「やれやれだ」定年退職者には本当に住みよい時代が再び始まろうとしている。
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