(20.10.1) アメリカ金融政策のダッチロール
アメリカ金融政策が完全にダッチロールし始めた。昨日(29日)までは金融安定化法案が通り、約75兆円の公的資金が投入されて不良資産の買取を実施する予定だったのに、一夜明けるとひっくり返っていた。
早朝のテレビはアメリカ下院で金融安定化法案が否決されたとのニュースをトップで伝えている。私は当初民主党議員が反対したのだと思って聞いていたが、なんとブッシュ大統領のお膝もとの共和党議員の造反によるものだと言う。
ブッシュ大統領が苦りきった表情で「前進するための対応策を考え出す」と言っていたが、まさか共和党議員が造反するとは思っていなかったようだ(共和党議員の法案賛成は65票、反対は133票だった)。
おかげで株価は過去最高の777ドルの下げ幅で、円高も104円まで進んでいる。おりしもアメリカ第4の銀行ワコビアも実質倒産してしまった。
「アメリカはもうだめだ。全て売りだ」市場は大パニックだ。
金融安定化法案が通らなければアメリカの金融崩壊は確実だから、いづれは妥協が図られるはずだが、この不手際は痛い。
なにしろペロシ下院議長ら米議会首脳の同意を得た法案が全く議会を通過できないのだから、米政府も議会首脳部も威信は地に落ちたようなものだ。
特にアメリカ政府高官の中でポールソン財務長官ほど評判を落とした人はいない。
「リーマン・ブラザーズの救済に公的資金の投入を考えたことは一度もなかった」と公言してリーマン・ブラザーズを倒産に追い込んだかと思えば、翌日にはAIGに約9兆円の公的資金をつぎ込んでいる。
「いったい、リーマン・ブラザーズとAIGの違いは何だ」市場は疑心暗鬼となったが、単にポールソン財務長官がパニックになっていたに過ぎない。
さらに今度は金融安定化法案を通過させて75兆円の公的資金をつぎ込もうとしたら、根回しに失敗して下院で否決されてしまった。
「ポールソンは何をやってもダメだ」ブッシュ大統領は歯軋りをしているだろう。
しかしポールソン氏のためにいささか弁明すると。歴史の変わり目には従来の思考に忠実に従う人は、対応不能におちいってしまうだけだ。
現在の状況は1929年の金融恐慌の再現だが、当時共和党フーバー大統領は「何もしないで市場に任せることが最善」と思い、恐慌の傷を深くした。そしてポールソン氏は100年を隔てて、フーバー大統領と兄弟のように思想が似ている。
「何もしないのが最善だ」ポールソン氏の本音はそうだから、「75兆円の公的資金を投入するなんてとんでもない」と本心では思っている。
そうした同志は共和党議員にはたくさんいるから、両者でサボタージュして金融安定化法案をつぶしたようなものだ。
ブッシュ大統領としたらどうしたらよいのか分からないだろう。公的資金を投入して大きな政府をめざせば、お膝もとの共和党が造反する。
一方、何もしなければアメリカは第二の大恐慌に突入する。
財務長官をポールソン氏からジョン・メイナード・ケインズのようなニュー・ディーラーに変えなければならないのだが、そうした人材は民主党にしかいない。
結局、アメリカ政局はこのねじれ現象を解消するために、大統領をオバマ氏にして、大きな政府の再現を図るより手はなさそうだ。
これで11月の大統領選挙はほぼオバマ氏に決定したといえよう。
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(注)写真はGoogleの画像データを検索して入手したものです。
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