(20.9.10) 文学入門 その2
昨日(9日)河村義人さんが主催する読書会に出席した。河村義人さんは本業は銀行員だが、一方で「子どもたちへのブンガク案内」という本を出版されているおゆみ野在住の作家でもある(おゆみ野walkersの「この人に会いたい」に詳しい)。
今回の課題の本は桜庭一樹(さくらば かずき)氏の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」で、この本を選んだのはAさんである。
Aさんによるとこの本は「とても衝撃的な本で、特に家庭内暴力や引きこもりを扱っていて、考えさせられる本だ。また構成もよくできていて次の話の展開のために必要な下地が必ずその前に周到に用意されている」という評価だった。
私は例によって桜庭一樹氏もこの本も全く知らなかったが、テーマ本なのでアマゾンに頼んで取り寄せた。
しかし読んでみて考え込んでしまった。
「うぅーん、これが小説なのだろうか。単なる猟奇小説で、一部の愛好家以外は好きになれないのではなかろうか」
そう思ったがかなりの読者層がいるらしく、旧版は何回も増刷されていた。
この小説の舞台は鳥取県境港だが、おそらくこの土地の人が読んだら眉をひそめそうな場所の紹介の仕方だ。
「田舎に作ったほうがいいと都会の人が考える全てのものがこの町にある。原発。刑務所。少年院。精神病院。それから自衛隊の駐屯地」
これがこの小説の基本的トーンになっている。
この本を読んですぐに思い出したのはアメリカ映画の「羊たちの沈黙」だ。天才的精神科医で人食で措置入院しているレクター博士が、新米のFBIの捜査官と一緒に、「若い女性の皮膚をはがして皮膚をそぎ落とし、その死体を川に流す」という猟奇事件の犯人の精神分析を行なうという内容だが、この小説もそれに近い。
そこに藻屑に興味を持つ花名島と言う少年が絡むが、この花名島と言う少年の取り扱いは、単にマゾとサドを挿入したいためだけに登場させた人物で、このあたりは桜庭氏の悪趣味が嵩じている。
私がこの小説を読んで一番閉口したのは、個人的なマゾやサドの趣味を何の脈絡もなく挿入することで「何のためにこんなこと書くの」という感覚だ。
最もこれについてはAさんの反論があり「これも現在の一断面をあらわしている」と言っていた。
かつてソビエトのフルシチョフ書記長が現代絵画を見て「これはロバの尻尾で書いたのか」と言ったがそれに近い。
Aさんはこの小説を非常に高く評価していたが、私の評価は最悪だ。
河村義人さんの評価も辛口だった。
「私はどの本でもどこかよいところを見つけて評価するようにしているが、この小説には評価するところがない」
しかしこの読書会ではそれぞれの人がその思った感想を自由に述べられるので、気兼ねなく発言できるところがいい。
今回この小説の評価は両極端に分かれていたが、別に評価を定めるわけでないので、それぞれが自分の思ったことを言えばいいのだ。
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