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(20.8.9) ぼくが生きた時 その5

(シナリオシリーズのその5です。その1からの続きですので、その1、その2、その3、その4を読まれていない方は「その1」、「その2」その3」、「その4」リンクが張ってあります>からお読みください


○ 自宅(夜)


  布団をひく次郎。夕御飯をたべずにねようとする。破れた上着を隠している。和子が不信に思い声をかける。

和子「次郎、どうしたの。ご飯たべないの? 風邪でもひいたの?」
次郎「今日、食べたく無い。寝る」

  布団の中で

次郎「ばあちゃん、ぼく、今日、アキオと闘った。ばあちゃんに言われた通り、ぼく、闘った。上着破られたげど、ぼく、負けなかった。アキオが泣いた。ぼく始めて泣かなかった」

○ 学校(昼休み)

語り「僕はいつかクラスで一番身体が大きくなっていた。そして喧嘩してみて、始めて自分が必ずしも弱くないことを知った」

  杉の木の鬼。雄叫びをあげながら次郎に迫ってくる子供達。最初にやって来たタコをおもいっきりなぐりつける次郎。泣くタコ。猛然と次郎に飛びかかるアキオ。とっくみあいの喧嘩。アキオをなぐる次郎。おさえつけられるアキオ。アキオに加勢する子供。辺りかまわずちかづく子供の腹を蹴飛ばす次郎。だれも次郎にかなわない。泣く子供。肩で息をする次郎

○ 教室(放課後)

  担任の立川先生が喧嘩の原因を聞いている。

立川先生「えぇー、どうしたんだ。どうしてこうなったんだ。言いなさい」

  黙っている子供達

立川先生「次郎、なんでみんなの腹をけったんだ、えぇー、あぶないじゃないか」

  唇を噛みしめてなにも言わない次郎。顔に擦り傷がある。

立川先生「最初に手をだしたのは誰だ(大きな声で)」
アキオ「次郎だよ、次郎がタコの腹を蹴っ飛ばしたんだ。だから、オレ、止めようとしたら、次郎がオレにパンチしたんだ。だから、喧嘩になったんだ。ナアー、みんな、そうだよなー」
子供達「(はやす)そうだ、次郎だ、次郎だ」

  黙って唇をかむ次郎。藤沢哲雄が手をあげようとする。

哲雄「あの・・・・」
立川先生「なんだ哲雄」
アキオ「哲雄,本当のこといえよ(睨みつけるアキオ)」

哲雄「いえ、なんでもない(口籠もる)」
立川先生「次郎,お前が最初にやったのか?」

  黙って答えない

  
アキオ「みんなみてたんだ、なあ。次郎が先にやったんだよな」

  そうだ,そうだとはやす子供達

立川先生「よし、分かった。他の者は帰っていい。次郎、お前は先生がいいと言うまでそこでたってなさい(決心したように)」
子供達「(はやす)ヤーイ、ヤーイ」

  天井をキッと睨んでいる次郎。

○ 教室(夕暮れ)

  暗くなる教室。ひとりたたずむ次郎。

次郎「(独白)ばあちゃん、ぼくばあちゃんとの約束まもってる。だってぼく、泣くといじめられる。だから闘うんだ」

  立川先生が教室に入ってくる。先生が優しく語りかける。

立川先生「次郎、どうしたんだ。お前、まえはこんな事、しなかったろう。喧嘩して、いつも泣いてた次郎が、どうしてパンチなんかするようになったんだ」

  
立川先生「先生、怒らないから、いってごらん」

  唇をかみしめたままの次郎。

立川先生「次郎、次郎にはおばあちゃんがいたな」

  びっくりして先生の顔をみる次郎。

立川先生「おばあちゃん、国に帰る前に先生のところにきた。おばあちゃん、次郎を助けてくれといってきた。家の話みんな聞いた」

次郎「(はじけるように)ぼく、ぼく、いつも泣いてた。だからぼくいつもいじめられた。だから、ぼく、もう泣かない。ばあちゃん、男の子は強くなれって言った。だから、だから、パンチしたんだ」

  
次郎「ぼく、そうしないと、いつも鬼だからだから、ぼく・・・・」

  じっと次郎をみつめる立川先生。

立川先生「次郎、分かったから、もう帰っいい。(間)ただパンチはよくないな」
次郎「うん」

○  映像

  アキオとの喧嘩。殴りつける次郎。互いの服が破れる。おびえる子供たち。次郎の後ろに回って次郎の足を蹴飛ばそうとするタコ。次郎が先に気付きタコの頬をおもいっきり引っぱたく。大声で泣き叫ぶタコ。

○ 父兄会(数日後,午前中)

  アキオの母親、下村まさ(33才)が立川先生につめよっている。同調する他の母親

まさ「先生は御存知ないかもしれませんが、この頃斉藤君の暴力には、ほとほと手をやいてるんですよ。先だっても、アキオの服がボロボロに破かれているんで、聞いたら斉藤君にやぶかれたっていうじゃありませんか。服、破かれてるの、アキオだけじゃありませんよ。他の生徒だってみんなそうです。それにタコちゃんなんか、いつもなんの理由もないのに斉藤君にたたかれてるんですよ。ねえ、みなさん(同意をもとめる)」

  うなずく他の母親。

母親A「斉藤さん、ちかごろ父兄会にいらっしゃらないけど、ちゃんと出てきて実情を把握してもらいたいものですわ」

  うなずく他の母親。

立川先生「はあ、お怒りはもっともですが、これには何か訳があると思います。よく調べてから次郎に注意しますから、すこし時間をください」

まさ「なにも訳なんかありません。斉藤君は不良なんじゃないですか。このままでは安心して子供,任せられません。きちっとしてください。いいですか、先生(強い調子で)」
立川先生「はあ,お約束します」

まさ「(皮肉っぽく)先生は斉藤君のおばあちゃんに何かいれ知恵をされているってもっぱらの評判ですよ。えこひいきしているって言う人もいますし」

立川先生「(あわてて)あっ,いえ,そんなことは決してありません。次郎には私から厳しく言っておきます」
まさ「どうしても駄目なら,校長先生にもご相談しなければと皆さんと話し合っていますのよ(十分な皮肉をこめて)」

  同調する母親。額の汗を拭う立川先生。

○ 職員室(昼休み,続き)

  立川先生の前に立っている次郎。イライラしている立川先生。他の先生がきき耳をたてている。

立川先生「次郎、先生は次郎にまえ、言ったろう。暴力はいかんと。なんでパンチするんだ。もうすぐ中学生になるっていうのにいつまでガキなんだ」
次郎「・・・・・」
立川先生「次郎、だまっていちゃわからんだろう(声を強める)」

次郎「・・・・(唇をかみしめたまま何もいわない)」
立川先生「アキオとタコのお母さんが、理由もなくお前がなぐるといってきたぞ。お前はいつからそんな悪い子になったんだ、えー(興奮する)」
次郎「・・・・」

  思わず,立川先生が次郎の胸ぐらをつかむ。

立川先生「次郎、いってみろ。だまってちゃ分からんだろうが」
次郎「(昂然と)ぼくは悪くない」
立川先生「なにをいうんだ。馬鹿(頬をたたく)お前は先生のいうことが分からんのか。そんなことじゃ,中学になったら不良になるぞ」

次郎「(弾けるように)ぼくはタコにいつも服,破られたんだ。そのときぼく、先生にいいつけなかった。いつもぼく、鬼だったんだ。でも、だれもかくれんぼ、やめようって言わなかった。アキオとタコなんかなぐっていいんだ」

立川先生「そ,そんな,古い話をきいてるんじゃない。いまのことをいってるんだ」
次郎「お母さんはいつもたたく。先生もそうだ。だからぼくだってたたいていいんだ」
立川先生「ばかやろう。この不良が!(ふたたび頬をたたく)」

  右頬をおさえ職員室を飛び出す次郎。茫然と見送る立川先生。

○ 校庭(同昼休み,続き)

  杉の木の下に子供が集まっている。アキオとタコが藤沢哲雄を詰問している。

タコ「哲雄,お前,やけに次郎となかいいじゃねいか。いつから子分になったんだよ」
アキオ「(すごむ)次郎と遊ぶと俺たちの仲間にいれないといっただろう」
タコ「仲間外れになってもいいのかよう。学校にこらせねえぞ」

  タコが哲雄の肩をこずく。

哲雄「・・・・・・・・・」
アキオ「いいか,哲雄,次郎にもうおまえとは遊ばないと言え。仲間外れになりたくなかったら次郎に言うんだ(強く)」
哲雄「やだ」
アキオ「お前,いい鞄もってるじゃないか。こうなってもいいのか?」

  アキオが哲雄の肩かけ鞄をとりあげ足でふみつける。他の子供も鞄を踏みつける。泣き出す哲雄。

哲雄「なにするんだよう。かあちゃんにおこられるよう。止めてくれよ」
タコ「金もないくせにいい鞄買うんじゃねい」
アキオ「弱いくせに強がるからいけないんだ鞄,破け」

  鞄を破こうとする子供達。教科書が地面にこぼれ落ちる。

哲雄「(泣き声)やめてくれよ,かあちゃんが働いて買ってくれたんだ」
アキオ「じゃ,次郎と遊ばないというか?」
哲雄「(不承不承)うん,いう」
アキオ「おい,鞄をかえしてやれ」

  ようやく哲雄にかえされた鞄。教科書が泥でよごれている。

アキオ「いいな,次郎と遊ぶとまたこうなるらな(脅す)」

  肩をいからせながら去っていく子供達。茫然とたたずむ哲雄。

(明日に続く)

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