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(20.6.12) 福田ビジョンは京都議定書の二の舞だ

 この7月の洞爺湖サミットを前に、福田首相が地球温暖化に対する日本の対応として、福田ビジョンを発表した。
福田首相としては、このサミットで日本が主導的な役割を果たしていることをアピールし、低迷している支持率の向上を果たすことで政権維持を図ろうとしている。

 しかし残念ながらこの福田ビジョン京都議定書と同様、日本の一人負けになる可能性が高い。

 なにしろ京都議定書の結果はひどいものだった。温室効果ガスの排出量1位2位アメリカ中国がさっさと抜けてしまい、結局残ったのはEU,日本、旧ソ連領の各国、東欧等だけになってしまった。
世界の排出量の約50%程度であり、このウェイトは近年ますますくなっている。

 これでは温暖化を阻止できないのは明確で、さらに問題なのはこの中で目標年度の2012年までに達成が不可能な主要国は日本だけになりそうなことだ。
EUは8%削減は確実で、ロシアなどは0%の削減率だが、日本は6%の削減率の達成がまったく不可能になっている(1990年対比すでに10%程度温室効果ガスが増加しており、結果的に2012年までに16%程度削減しなければならない。これに対する対応策は何もうたれていない

 達成が不可能な場合は、EU等にペナルティーを支払うことになるが、その金額は私の試算では約6000億円になる(注1参照)。
なんてことはない、日本は京都議定書の議長国としてできもしないことを約束して結果的に6000億円ふんだくられるだけだ。

 この失敗にこりて、2013年以降の温室効果ガス削減率協議で、EUに対抗して出したのが福田ビジョンで、その心は「できることだけをしよう」である。
いわゆる「セクター別アプローチ」と言うのがそれで、各セクターごとに可能な数字を積み上げ、その合計を各国の削減率にしようというものだ。

 しかしこれはEUの賛同は得られそうにない。EUはすでに中期目標(2020年まで)として、1990年対比20%の削減率を達成する案を出しているが、日本が「セクター別アプローチ」でこれより低い案をだしたら、EUからそっぽを向かれてしまう。
しかもアメリカ中国インドといった最大の排出国は国別割当枠に反対して、自主的な削減しかしない可能性が高いので、ふたたび日本だけが無理な数字をEUに押し付けられる可能性が高い。

 しかも福田ビジョンの中には明らかにひどい矛盾が存在している。
セクター別アプローチ」といいながら、一方で中期目標(2020年まで)として、14%温室ガスを削減すると言うのだ。
この数字は、2012年までの削減率6%プラス14%で合計20%EUの中期目標そのものである。

 「セクター別アプローチ」を標榜しながら、その実EUの目標と同じにすると言うことは、再び「できもしないことを約束する」ことになり、日本だけがペナルティーを支払う可能性が高い。
京都議定書の二の舞だ。

 具体的に福田ビジョンを見てみよう。ポイントはいかの通りだ。

長期目標(2050年まで): 日本は現状比 60~80%の二酸化炭素の削減を行なう(ただし長期目標についてはまだ40年以上もあるため、誰も本気で考えているわけでなく、ただ言って見ただけ)

中期目標(2020年まで): 産業別にセクター別アプローチを行い、現状比14%の削減を行なう
(これはEUが1990年対比20%の削減目標を設定したので、日本は2012年までの削減目標6%に14%を加えて、数字を20%にしたもので、本当の意味でのセクター別アプローチではない

・国内排出量取引の創設(注2参照): 今秋以降に、国内統合市場を作って試験的に導入する(すでにイギリスでは2002年に導入済みで、EU全体としては2005年に導入済み。日本はとりあえずやってみようと言うポーズ)

 福田首相としては、これでEU各国と同レベルの温暖化対策が日本において実施されていると胸を張り、この会議をリードしていくつもりだが、アメリカや中国、インドには逃げられ、最終的に「セクター別アプローチ」と称して、日本は中期目標20%削減をEUに約束させられるだけになるだろう。

 なにしろ温暖化対策EUがアメリカや新興国(中国、インド等)に対し復権を図ろうとしている戦略的大プロジェクトである。

ヨーロッパの資源は環境だ
その心は「排出枠を設定して達成できない国からペナルティーをふんだくる」ことにある。

 そしてこの枠組みに参加し、結局ペナルティーを支払うのは残念ながら日本だけになってしまいそうだ。
日本は相変わらず戦略の下手な国の代名詞になったままだ。

  
(注1
日本が2012年までに、都合16%以上の削減枠をEUの削減超過達成国から購入しなければならないと仮定し計算すると以下のとおりになる。

価格がいくらになるかは、市場動向にもよるが、1990年の排出量12億6100万トンの16%、約2億トンの排出枠を購入する必要がある。
現在の相場はトン当たり約3000円だから、合計で6000億円相当になる。

(注2)
排出量取引は国際間取引と国内間取引があり、この取引はまったく別物である。
国際間取引は政府同士のペナルティーの調整であり、1990年対比12012年までに日本は6%の削減を約束した。

一方国内間取引は国内で産業別に、ある特定年度を基準として排出枠を定め、さらに個別の企業にそれを割り振っていき、そのプラスとマイナスの企業間で取引を行なう。





おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
 「pianotokurarinetto.mid」をダウンロード








 

 

 

 

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