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(20.5.21) 三菱東京UFJ銀行はシステム統合で大騒ぎだ

 おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
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 三菱東京UFJ銀行はシステム統合のトラブルで大騒ぎだ。「最大の経営課題」と銘打ち「世界最大規模のシステム統合」を目指したが、初日(12日)に提携先のセブン銀行のATMが動かなくなり、約2万件の取引ができなくなったと言う。

 例によって役員は深々と頭を下げ「障害を起こした取引をリハーサルの対象にしていなかった」と弁明したが、金融庁はひどいおかんむりだ。
何しろ金融庁としてはみづほ銀行のシステム統合の失敗に懲りて、① システム統合を1年延期し十分なテスト期間を設けさせ 定期的な報告を義務付け、さらにターゲット監査まで行いそれでも心配なので  東京三菱とUFJのシステムの新システムへの統合日を分けて段階的移行までさせたのに、これでは何のために指導してきたのか分からなくなってしまった。

俺の顔に泥を塗った」と、銀行法に基づく障害報告の提出を求め、恐怖の業務改善命令を出すようだが、私の判断ではそんなことをいくらしても障害の発生はなくならないと思う。

 実はこの点システム担当者(私もその一員ですそうでない人との認識が決定的に違うところだ。システム担当者は経験的に障害をゼロにすることなど不可能なことを知っている。
障害はある確率の元に発生し、98%の確率で安全だとか99%の確率で安全だとかの確率統計の問題だと思っているが、その他の人100%安全か否かと問う。
絶対に障害が発生しないことを確約してください

 本当に100%安全かどうか確約するためならば、半永久的にテストを繰り返し、そもそもシステムの稼動などできなくなってしまう。
時間と費用と人員」に限度があるならば、その限られた条件の中で最善を尽くすしかないので、結局は重要性の原則に従ってテストをするのが普通だ。

 今回の障害の原因は  通帳未記帳が10件以上ある顧客に、 記帳を促すメッセージを送るのだが、 その時のコードが仕様ではカタカナコードであったのを漢字コードで送ってしまった、のが原因だと言う。

 たしかにこれだけ聞けば「テストさえしていれば簡単に分かるトラブルではないか」と言うことになるが、記帳を促すメッセージを送るような付随的な処理が、セブン銀行とのテスト項目からはずされていた経緯は私にはよく分かる。

 通常他行システムとのテスト時間調整で困難を伴うものだ
おそらくセブン銀行は自分のシステムでないのでどうしても協力は消極的になり、「この時間しかテスト時間は取れません」なんていっているはずだ。
その結果テストは限られた時間の間にしなければならなくなり、預金の入出金取引のような最も重要な処理のテストでほとんどの時間がとられてしまう。

 だから今回のような付随業務をテスト対象にできないのが普通で、システム稼動に100%の完全性を求めるなんてどだい無理なのだ。
所詮確率の問題だと私は思っているが、残念ながらシステム担当者以外はそう思わない

 三菱東京UFJ銀行の役員も「やれることはすべてやった」なんて言うものだから、世間はまったく障害が発生しないと思ってしまう。

 この認識相違が本当の意味で問題だと思うのは、このシステム統合のために三菱東京UFJ銀行約4000億円の費用と、国内のIT技術者約20%に相当する6000名を集めたことだ。
金や人はいくらつぎ込んでもいい。失敗だけはするな

 しかし、その結果得られるのは  ATMの稼働時間と  手数料が東京三菱とUFJ間で合わせられることぐらいだ。
コストパフォーマンスが極端に悪い。

 今回開発した預金取引のようなシステムを勘定系システムと言うが、これは1980年代に技術体系が確立され、その後コンビニATMとの連動のような拡張はあったものの、技術的にはなんら新鮮さがない
一言で言えば一世代前システム体系と言える。

 私はある金融機関システム部にいたので知っているのだが、勘定系システムにまわされたシステムマンは一様に思ったものだ。
こんな古臭いシステムのお守をしているようじゃ、俺のシステムマンとしての人生も先が見えた

 金融機関では国際系システム証券系システムリスク管理システム花形で、勘定系システム旧日本軍のイメージでいえば、航空母艦の時代に戦艦大和を作ったようなものだ。
このような一世代前のシステムを再構築するために、三菱東京UFJ銀行4000億円の費用と6000名のシステムマンを集めた。

 理由はただ一つ。トラブルが発生し、金融庁の業務改善命令を受け役員が更迭されることを恐れたからだ
俺の首がかかっているのだぞ

 しかし役員の首の問題を別にすれば三菱東京UFJ銀行がいう「ATMの稼働時間と手数料体系を統一することが、最大の経営課題」という意味が理解できない。
資源配分に無駄が多すぎる。

 考えても見てほしい。今世界の金融機関の本当の課題はサブプライムローンによる損失の発生にいかに対処するかにある。
欧米の銀行は軒並み数兆円の損失を計上し、資本増強をはからなければ倒産はまぬがれない。

 日本の失われた10年の逆バージョンだ。
幸いなことにみずほ銀行を除けば、日本の金融機関の損失は少ない。
欧米の金融機関が身動きできなければ、それこそ失われた10年で世界市場から締め出された日本の金融機関が復活するチャンスではないか。
特に三菱東京UFJ銀行は名実ともに日本のトップバンクである。

 ところが当の三菱東京UFJ銀行の「最大の経営課題」はシステムを統合して,ATMの稼動時間手数料体系をあわせることだという。
そんなことで時間を失っていいのか私だったら叫んでしまう。

 
ぜこのようなことになってしまうか。その原因は、金融庁マスコミをはじめとする世間一般が「障害を確率統計の問題としてとらえず、100%の完全性を求める態度」にある。
これでは、日本の金融機関は永遠に二流のままだ。

 私は是非とも「障害は天気予報と同様に確率統計の世界の問題だ」という認識が一般化し、一定のトラブルは想定範囲の内だと考えるようになってほしいと思うのだが、残念ながらこの認識に到達するには戦艦大和の撃沈が必要のようだ。

(お願い)読者のご意見を待ちしてます。

 

 

 

 

 

 

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