(20.2.13)金融庁はなぜ新銀行東京の検査をしないのか
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先日(9日)、NHKのクローズアップ現代で新銀行東京問題を取り上げ、石原都知事がゲスト出演していた。
この日はいつもは沈着冷静な国谷裕子キャスターが声を上擦らせて、石原都知事とやりあっていたのが印象的だった。
誰でも本気になると声の調子が変わるのは仕方ない。
この中で国谷キャスターが盛んについていたのは「400億円の追加出資をするにあたって、なぜ内部調査だけで済ませたのか。外部の信頼できる調査機関、たとえば金融庁の検査をなぜ受けなかったのか」ということだったが、都知事の回答ははっきりしないものだった。
「来ると言うのであれば拒まない。来るかどうかは金融庁の決めることだ」
しかし、「なぜ金融庁がこないのか」には深い訳がありそうだ。
というのも金融庁は金融機関の経営状態を危惧すれば、今まではすぐさま検査に入り、得意の業務改善命令を出してきた。
この業務改善命令はかなり曲者で、経営が悪化している金融機関にとってはとても守ることができないような内容なのだ。
仕方なく金融機関は手を上げ、他の健全な金融機関に吸収合併されるか、長銀や日債銀がそうであったように国有化されて不良債権をきれいにした後、売却されるのが普通だった。
このため金融庁は巨額の国費を投入することも辞さなかった。長銀には約8兆円、日債銀には約2兆円の国費が投入されている。
では、なぜすでに実質債務超過に陥っている新銀行東京に金融庁は検査に入らないのか。不思議ではないか。
ここからはホームズとワトソン君に聞いてみよう。
「ホームズ、誰もが不思議に思っていることは、これほどまでに経営が悪化した金融機関になぜ金融庁が検査をしないかということだが、NHKの国谷キャスターも同じ疑問をしていたが」
「これはこの銀行の設立にあたって、金融庁と都との間で激しいバトルがあったことが原因だと思われる。
金融庁としては無担保無保証の中小企業融資を行なう銀行など、到底認めることができなかったはずだ。おそらく以下のようなやり取りがされたと想像される。
『都知事、無担保無保証の中小企業融資は融資の中でも最も高度なノウハウが必要とする融資です。素人経営でできるものではありません。ようやく日本の金融機関も不良債権処理が終了し健全性が確保できてきたのに、新たに不良債権をかかえるような金融機関の設立を許すわけにはいきません』
『何を言ってるんだ。かわいそうな中小企業に金がまわらないから、都がかわって融資をしようと言ってるんだ。私がこの国を助けようとするのに、君たちはそれを邪魔するのか』
『都知事、金融は経済行動で政治とは違います。もし新銀行東京が債務超過に陥っても、他の金融機関に吸収合併させることができません。
無担保無保証の中小企業融資をしている危険な銀行を引き受けられないからです。
したがって金融再生法を発動して、国の管理下におくことになるでしょう。
そのためには国費の投入も必要になります。最初から債務超過が見込まれる金融機関の設立をみとめれば、われわれが国民から非難されます』
『私は都の責任で運営するといってるんだ。今回1000億円の出資を予定しているが、必要ならばいくらでも金をつぎ込める。都の財政はそのぐらいのことはできるから国から金をもらおうとは思っていない』
『しかし、都知事、われわれは法律に基づいて行動しなければなりません。経営悪化が見込まれれば金融検査をすることになります』
『都が責任を持つといっているだろう。それなら金融検査をしなければいい。もし経営が悪化してもその時は都が財政支援をするから、あんたらはその後から来ればいい。そうすれば健全な金融機関と認定して帰れるわけだ』
『そこまで、都知事がおっしゃるなら新銀行東京の設立を認めますが、金融庁としての責任は負いかねます』
『責任はわしが負うといっているだろう。責任、責任なんて言っているから、中小企業がバタバタと倒産してしまうんだ。これだから政治を知らないものは困る』
実際は新たに銀行免許を得たのではなく、バリバ信託を23億円で買収したのだが、いづれにしても金融庁と事前の話し合いが必要だったはずだ」
「すると、金融庁としては設立の経緯から渦中の栗を拾うのがいやで、すべて都の責任で対応してもらおうということか。そおいえば渡辺金融相が『都には主要な株主として経営を立て直す責任がある』といっていたが、『約束どおり自分で始末しろ』という意味だったんだね」
「はっきり言って、この倒産銀行の落とし前を誰がつけるかということだ。現在の融資約2600億円について今後大半が不良債権化することは間違いない。この不良債権部分を今後誰が見るかの問題なのだ。都か国か。
国としては都の責任だと突き放している」
「では金融庁の検査は行なわれないのだろうか」
「いや、そうとばかりは言えない。金融庁が検査に入ってくるときは、都がこれ以上の不良債権に耐え切れなくなって、金融庁になきついた時だ。
『400億円以上の追加出資は議会が許さない。何とかしてほしい』
その時は、石原都知事の責任問題が発生するがね」
「あのプライドの高い石原都知事が金融庁に泣きつくだろうか。また都議会を脅して追加出資をさせることにならないかい。
今、都知事の言うことを聞くのは都議会しかないのだから」
「都知事としては400億円出資したのだから、都知事の任期が終わるまでは、何とかこの金で持たせたいと思っているだろう。
しかし3年間にかなり不良債権が膨らみそうだ。都知事としては任期の残りの3年間は薄氷を踏むような思いで過ごすことになってしまったね」
なお、新銀行東京に関連する記事は、このブログのカテゴリー、「評論 新銀行東京」に入っております。
(20.4.29追加)
ついに25日、金融庁が検査に入ることになった。私の予想は都が金融庁に泣きついて、その結果検査に入ると言うものだったが、実際はそれより早く金融庁が決心をした。
金融庁は現在の融資約2600億円の査定を厳しく実施するはずで、その結果相当規模の引当金の積み増しが、新銀行東京に必要になるだろう。
その資金を再び都が出せるかどうかが次の勝負になるが、都議会は「400億円が最後」の言質を取っており、今度は応じかねるはずだ。
したがって石原都知事の責任問題が表面化してくることは必定の情勢になってきた。
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