« (20.3.18)小谷小学校の卒業式に参列した | トップページ | (20.3.20)筆談 »

(20.3.19)アメリカの失われた10年が始まった。

おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
 「pianotokurarinetto.mid」をダウンロード



 「歴史は二度繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」と言ったのは、カール・マルクスだが、昨今のサブプライムローンに端を発するアメリカの金融・経済情勢は1990年代の日本の失われた10年にそっくりだ。

 私は当時ある金融機関にいたのだが、住宅専門会社が倒産し、続いて北海道拓殖銀行、山一證券、長期信用銀行、日本債権信用銀行が倒産したのには心底驚いたが、さすがに今回アメリカの住宅専門会社や証券会社が倒産しても驚かなくなった。
ああ、これは歴史が繰り返されているのだ

 日本では土地バブルの崩壊が端緒だったが、アメリカでは住宅バブルの崩壊が端緒だ。
どちらも目いっぱい不動産担保融資を受けて投機に走ったが、バブルがはじければ不良債権の山になるのは仕方ない。

 アメリカ人は2006年まで平均で年率10%越す住宅価格の高騰に浮かれた。場所によっては翌年に倍になる場所もあったはずだ。
日本の住専のような金融ブローカーは低所得者にこう融資を勧めていた。
最低でも5年たてば住宅価格は倍になります。うまくいけば3年で倍になるかもしれない。そうしたら今お金を借りても、住宅を売れば半分は自分のもになりますよ。
1000万円がなんですか。すぐに2000万円になるのですよ。その間は利息だけを払っていればいいんですよ。
お金を借りるだけで、あなたは大金持ちになれるのです」

 実際はもう少し複雑なのだが、だいたいこうしたノリで融資を勧めていた。
もっとも金融ブローカーは住宅融資を証券化して金融機関ヘッジファンドにすぐに売っていたから、いつまでも住宅価格が上がるとは思っていなかったようだ。リスクをまさにヘッジしている。

 こうして積みあがったサブプライムローン融資残高130兆円に膨れ上がった。
世界が飛びついた高利回りの絶対安心な商品と思われていた証券はこのサブプライムローンをたっぷり組み入れていた証券だ。

 たしかに、住宅価格が毎年上昇していればそのとおりだが、日本の土地バブルと同じで、バブルはいつかはじける
2006年にFRBが景気の加熱を心配して、日本で言えば公定歩合に相当するレートを引き上げた頃からおかしくなった。
住宅価格が頭打ちになり、下がり始めたからだ

 こうなるとサブプライムローンを借りていた人がパニックに陥った。
このローンは当初5~6%の金利で元本の返済もないのだが数年後10%程度の金利になり、元本返済も始まる
「あなたどうするの、住宅を売ったら元本割れだし、生活費も切り詰められないわ

 もともと収入が少ないのに、住宅価格の値上がり益だけをあてに住宅ローンを組んでいたのだから、延滞が続出し、いたるところにSALEの看板が立ち始めた。
差し押さえられた住宅は投売りだから価格は急速に低下する。


 当初はこのローンの延滞率は10%程度と思っていたが、当然のことだが、住宅価格の低下に伴って延滞率は上昇する。
はたしてどこまで延滞率が上昇するかは、やはり日本に先例がある。
日本では土地価格はまたたくまに半減し、最終的には30%相当にまで低下した。延滞率70%だ

 だからサブプライムローンも残高130兆円のうち、その70%約90兆円は焦げ付く可能性がある。これは日本の失われた10年の約100兆円とほぼ同額だ。

 アメリカは住宅ローン会社がつぶれ、証券会社の大手がつぶれる段階まで来た。日本で言えば山一證券がつぶれた97年の段階に相当する。
次は金融機関が倒産する番だ。大手金融機関は中東や中国の政府ファンドから資金を調達して急場をしのいでいるがいつまでも続けられない理由がある。
アメリカの金融機関が中東の王族や中国に乗っ取られていいのか」と国民が心配し始めるからだ。

 そこでアメリカ政府が公的資金を投入するかどうかがポイントになる。
日本政府は結果的に51兆円相当公的資金を投入して、金融パニックを回避した。
不良債権100兆円のうち、半分は金融機関の自己責任、半分は公的資金の投入でしのいだ。

 おそらくアメリカも日本の事例にならうだろう。「歴史は二度繰り返す」のだから公的資金の投入以外に手はない。

 ただ、アメリカ政府はこの資金を赤字国債を発行して調達することになる。日本の例にならえば金額は約45兆円相当だ。
そして赤字国債の発行は当然ドル安を加速し円高はとどまるところを知らない。私の試算では75円まで円高がすすみそうだ(ようやく円高が始まった 参照)。

 アメリカの失われた10年は今始まったばかりだ。
やはり「歴史は二度繰り返す」 一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」

 

 

 


 

|

« (20.3.18)小谷小学校の卒業式に参列した | トップページ | (20.3.20)筆談 »

評論 世界 アメリカ経済」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。