(20.3.10)ようやく円高が始まった
「おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
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ようやく円高局面になったらしい。私は長い間円高を待っていたがなかなかそうならなかった。
別に為替相場に投資しているわけではない。幸か不幸か私には為替相場に投資するような資金はない。
私が円高にならないとおかしいと思っていたのは、日本のようなまじめな経済運営をし、かつ働き者の国民がいる国の通貨が、赤字を垂れ流し、浪費癖がおさまらない国民がいるアメリカのドルと同じでは説明がつかないと思っていたからだ。
どの程度の円高が適当かは、幸いにユーロの事例がある。ヨーロッパはドルと手を切るためにユーロを創設したが、これによって瞬く間にユーロ高になり、ほぼ1対1だったユーロとドルの相場はユーロが1.6倍に高騰した。
この例でいくと長らく1ドル120円だった相場は、1.6倍の75円まで円高が進んでいいことになる。
一般に円高になると経済界は不況が始まるように大騒ぎするがこれは単なるパフォーマンスに過ぎない。
日本の主要な輸出産業はすでに世界各国に工場を建設し、最もコストの安くなる場所で生産する体制を整えている。
困るのは国内だけに生産拠点をもっている一部中小企業だが、その輸出の寄与度は当然ながら小さい。
だから本音で言えばトヨタを見れば分かるように「円高にはヘッジ済み」と言うのが実態なのだ。
一方、輸入についてはメリットが実に大きい。特に大きいのは原油価格である。日本は原油のほぼ100%を輸入しているが、これがドル建てであることがキーだ。
現在はなお石油の時代だと言っていいのだが、これをアメリカがほぼ100%抑えている。取引はニューヨークとロンドンの取引所で取引されるがこれはドル以外の取引を許さない。ドルと石油は完全にリンクしている。
過去ドル以外の決済をしようとした国はアメリカによってつぶされてきた。
ソビエトロシア、イラクである。そして次はイランだ。
だから円高が進めば石油価格が高騰してもドル決済なのだから「だからなんなの」と言うことになる。
もし円高が進んで75円までなれば、現在1バーレル105ドルの石油は、実質約65ドルだ。
まさに「だからなんなの」と言う水準になる。
日本は原材料以外に食料品の大輸入国だが、これもドル決済である限り円高を享受できる。海外旅行も思いのままだし、海外に居住すれば王様気分だ。
だから「円高になって何が悪いの。物価が下がるだけじゃないか」と言うのが私の率直な感覚だ。
しかしとても残念なことに、日本がユーロのようにドル対比円高になれない理由もまたある。
アメリカの国債の主要な購入国が日本であり、この国債を日本はアメリカの同意なしには売れない。
これは、アメリカの赤字部分を日本が肩代わりしているのと同じで、世界から見るとアメリカと日本は一心同体なのだ。
「日本はアメリカと一緒に沈没さ」これが世界の見方だ。
覚えておられるだろうか。いまから約10年ほど前に当時の橋本首相が「アメリカ国債を売却したいと思ったことがある」といって大騒ぎになったことを。
実際はできもしないことを言ってみたのだが、これがアメリカの心象を著しく害した。
「橋本は危ない」
橋本政権が短命に終わったことの一つの理由にアメリカから見放されたことがある。
以来、日本政府はアメリカを恐れて、アメリカ国債の売却話はタブーになった。
では日本がアメリカ国債を売却できないのに円高になった理由はなぜか。
アメリカの赤字が大きくなりすぎて日本だけではファイナンスできなくなったからだ。経済力の低下した日本だけでは買いきれないのだ。
そして皮肉なことにアメリカ国債の主要な買い手が中国になってきた。
そのため世界の見方が変わった。
「どうやらアメリカと沈没するのは中国か」
まったく皮肉としかいいようもない。日本の経済力の低下がアメリカ国債の購買力の低下となり、結果として円高になってしまった。
「日本もアメリカから離れざる得まい」世界がそう見始めた。
これで、さらにアメリカ国債を自由に売却できればすぐに75円までの円高になるのだが、残念ながらすぐにそこまでは行きそうもない。
しかし明らかに円高の足音が聞こえてきた。喜ばしいことだ。
円高についての意見を求めます。
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