(20.2.23)石原都知事のガダルカナル
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誰にでもたそがれがあるのを知って感慨深かった。
石原都知事が発表した新銀行東京の400億円の追加出資のことである。
東京都が1000億円を出資し「中小企業支援」を目的に設立した新銀行東京は、創業3年目にして約1000億円の累積赤字を計上し、実質的に倒産している。
倒産してないと強弁しているのは、石原都知事だけだ。
東京マラソンのような大イベントを成功させたり、三宅島噴火に伴う危機管理で辣腕を振るった石原都知事も、新銀行東京では大失敗をしてしまった。
政治で経済を動かすことが出来ないのはソビエトロシアの崩壊で証明済みだが、その教訓を学ばなかったようだ。
石原氏が03年4月の知事選で「中小企業支援を目的に、原則無担保・無保証の融資をおこなう金融機関を設立する」と言ったとき、私は冗談だと思っていた。
と言うのも私自身ある金融機関の職員だったが、バブル崩壊後融資部門は慢性的な赤字体質になり、できれば撤退したい業務の一つだったからである。
「融資部門に回されたら、出世からは取り残された」それが職員の常識だった。
日本の公定歩合は長らく1%以下に押さえられているが、この意味は決定的に大きい。
これは資金を借りる企業がないと言っているのと同じだからだ。
融資担当者は名前を営業担当者と変え、優良企業にディリバティブという金融商品を熱心に勧めていた。
ディリバティブとは、企業の余裕資金の運用方法だと思えばいい。
融資ではない。運用である。
一方融資を希望するほとんどの企業は、倒産予備軍の企業であり、営業担当者が融資をしたら背任行為になるような先なのだ。
だから石原都知事が「中小企業に対する貸し渋り対策として、銀行を設立する」と言った時、「倒産することがほとんど確実に予想される企業に貸し出しをすることが融資なのか」と首を傾げてしまったのだ。
「背任行為ではないか」
しかし、政治家は奥深い。「きっと裏がありそうだ」と私は想像した。これはきっと体のいい補助金政策でないかと思ったのである。
「倒産しそうな企業に対し、直接補助金を出して救済すれば有権者から反発が出る。そこで融資という形態にして補助金を出す。
有権者には融資だから回収されると説明しておく。全部が焦げ付くことはないから、自分が都知事をしている間は、なんとかぼろはでないだろう。
補助金は1000億円程度あれば十分ではなかろうか」
とてもうまい方法だがぼろが出てくる速度が速すぎた。融資は次々に焦げ付き、たった3年で、累積赤字は1000億円になってしまった。
倒産予備軍の企業は石原都知事の予想をはるかに越えていたからだ。
石原都知事は歯軋りして経営陣の無能さをしかったが、これは「俺が都知事をしている間に、ぼろを出すとは何事だ」と言う意味だ。
そして今、さらに400億円の出資をするという。「これで何とか持たせろ」と言う意味だが、こうした方式を逐次投入方式という。
これではガダルカナルだ。
ガダルカナルを覚えておられるだろうか。日米決戦の分水嶺になった戦いで、日本軍は都合3万の兵士を逐次投入し、うち2万が戦病死して敗退したあの戦いである。
このときまで劣勢だったアメリカ軍は乾坤一滴の勝負として、この島に大量の軍隊を派遣して日本軍を待ち構えた。
この戦いを指導したのは辻正信と言う作戦参謀だが、アメリカ軍を甘く見た。
兵力を逐次投入し、たちまちのうちに打ち破られたのだが、敗戦を認めたくなかった辻正信は、責任を現地司令官になすりつけてさらに逐次投入を続けた。
日本が敗退した大きな原因の一つが、この時の作戦指導にある。
なぜ辻正信は兵力を逐次投入しつづけたのだろうか。
「この作戦が判断ミスであることが分かると、責任を取らなければならなかった」からである。
同じことを今石原都知事がしようとしている。
私は政治家が失敗することを認める一人だ。人間のすることだから判断ミスがあるのは仕方ない。
しかし大事なことは、誰が見ても失敗したことが分かった段階で、権力者は強弁してはいけない。
「私の判断ミスだった。許してほしい。新銀行東京を解散して、これ以上都民に迷惑をかけない」そういえばいいのだ。
とても残念なことに石原都知事は強弁している。資金を逐次投入することで、責任を逃れようとしている。
「悪いのは経営陣だ。俺じゃない」
だから新銀行東京は石原都知事のガダルカナルなのだ。
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コメント
石原さん、「トカゲのしっぽ切り」それはないでしょう!
新銀行東京を発足させたのはやはり「武士の商法」でしたね。でもあなたは、全く他人の意見を聞かずに、強引に突っ走って、都が出資した1000億円はドブに捨てたと同じ事になりました。さらに400億円もドブですか。
でもね、失敗したのはすべて経営者の責任のようにおっしゃり、責任も取らせるのって、「トカゲのしっぽ切り」って言うのじゃないのかなあ。
知事室には週に3日しか出勤せずに側近の副知事にすべてを任せていたり、奥さんと一緒に豪華な海外旅行をしたり、息子さんを取り立てたり、そういうのって「ワンマン」と言うのではないでしょうか。小説家が登場人物を勝手気ままに描くのは自由ですが、都政を担当する身ではそうはいかないのと違いますか?以前、伏魔殿などと言われたましたがそのようなことにしては欲しくないのでね。
そろそろ「猫に鈴」ではなく「虎に鈴」をつける時期に来ているように思えるのですが、生憎私は都民でないのが、くやしいです。
投稿: 慎た郎 | 2008年2月27日 (水) 18時38分