(19.7.31)忠助 シナリオその4
7月28日から4日間はシナリオ週間になっております。このシナリオはシナリオ1、シナリオ2、シナリオ3からの続きですので、まだ読まれていない方は、そちらから読むようにしてください。
15.大山剣ガ峰からの下降路
語り 「こおして忠助は、大山剣ガ峰からの下降をはじめたのです」
音響 忠助のテーマソング
音響 梟の声、狼のさけびごえ
忠助 「しかし、夜中の大山は不気味だね。はやく降りて、温泉でいっぺいやりたいよ。疲れたけど、もう少しで大犬神神社に到着するはずだよ。ありゃー、なんだありゃー。かがり火と松明の大群じゃねいか」
16.大神山神社の結界
音響 松明の燃え盛る音
忠助 「なんだい、どうしたんだい。異様な雰囲気だね。なんで山伏が完全武装して待ち構えてるんだい。ひいふうみいよ、いや50名はいますよ」
音響 不気味な経をよむ声
忠助 「こりゃ、いけねえや。どうも、すん なり通してくれそうもありませんよ」
音響 忠助の足音。緊迫感をもりあげる効果音
山伏 「あいや、またれよ、そこもと途中で上半身は熊、下半身は人間のなりをした熊男に遭遇しなかったか?」
忠助 「いや、拙者、いっこうに存ぜぬが。熊がどうにかしたのでござるか」
山伏 「いや、先程遠眼鏡で稜線を探索していたところ、わが眷族の修験者二名が熊男におそわれ、あわれ、谷底へと墜落、生死不明の状況でござる。しかし、熊男に会われなかったことは何より。されば、きおつけていかれよ」
山伏 「頭領、別段怪しげな人間ではないようです」
忠助 「(独り言)やれやれ、もう少しでつかまるとこだった」
17.橋本周の奥座敷
音響 小鳥の囀り。竹藪にふくそよ風
語り 「かくして無事に津和野に帰りついた忠助が、周、菊の前で伯耄大山の荒行の結果を報告している
周 「忠助、よくぞ無事に戻った。大義であった。して、首尾はいかがじゃ?」
忠助 「旦那様、お喜びくだせい。伯耄大山の荒行、みごと終えてめいりやした」
周 「途中で身元が割れるようなことはなかったであろうな?」
忠助 「大山寺の関所も、大神山神社の関所もなんなく、くぐり抜けやした」
周 「さようか、それを聞いて安心した。疲れたであろう。ゆるりと休め、もう下がってよいぞ」
忠助 「あの、実は、ヒサに祝言のこと、すぐにつげていのですが」
周 「(ギョとして)ヒサか、そうじゃったのう、ヒサか。しかしヒサはこの屋敷にもうおらぬ。おらぬのじゃ」
忠助 「(不信げに)じゃ、病気でもして、国に帰ってるんでやすか?」
周 「(さらにどぎまぎして)いや、いや、そうではないのじゃ。よわったのう、菊、なんとか答えてくれぬか」
音響 不吉な効果音
菊 「忠助、実はヒサはな、当藩の藩主、出羽守様が当家にお忍びでこられたおり、いたくお気に入りになり、そのまま、側女にされてしまわれたのじゃ。いや、私も忠助という許嫁がいるので、そればかりはともうしたのですが、おお殿様はあのように気短なおかた、どうすることもできなかったのじゃ。忠助、許してくりゃれ」
忠助 「(大声で)そりゃ、ねえすよ。伯耄大山の荒行、みごと成就したあかつきには、ヒサと夫婦になっていいって、約束したじゃねえすか。旦那様は反対してくれなかったんでやすか」
周 「いや、それがな、忠助。運の悪いことにわしは伯耄大山に荒業にいっていることになっておろう。悔しいではないか、忠助、わしが留守であることを幸いに、なんと、何とおお殿様は当家にお忍びでこられたのじゃ」
忠助 「で、旦那様はどうしておられたのでやすか」
周 「うむ、押入れにかくれて様子をうかがっておった」
菊 「忠助、聞いてくりゃれ、わらわが殿様より無理難題をいわれ、手を握られて飲めぬ酒をのまされているあいだ、旦那様は平気でおしいれに隠れておられたのですよ」
周 「そ、それは、伯耄大山に荒業にいっていることになっているので致し方なく」
菊 「ところが、女中のヒサが酒肴を運んできた途端、おお殿様の態度ががらりとかわり、わらわのことなど全く無視、ヒサをどうしても側女にと、それはつよいお申し出。するとなんと旦那様が押入れからでてまいって」
周 「そうじゃ、忠助、わしは断固反対したのじゃ。ヒサの代わりに、菊をと、なんどもたのんじゃのじゃ。菊ならばいかようにもと泣いてたのんだのじゃ」
菊 「まったく、わらわの時は冷静そのものであるのに、ことヒサのことになると我をわすれて飛び出してくるとは、呆れてものもも うせませぬ」
周 「それでな、忠助。わしが影武者をたてたこと、おお殿にばれてしまったのじゃ」
忠助 「それでどうなっちまったんで」
周 「うむ、忠助、許してくれい。影武者の件を内緒にする条件としてヒサをおお殿の側女にさしだすことになってしまったのじゃ。おお、かわいそうなヒサ(泣き出す)」
菊 「ふん、わらわのことで泣いたことなどないくせに」
18.津和野、二本松城
音響 松風
語り 「津和野、二本松城の堀端で強い決心をしている忠助がおりました」
忠助 「ヒサちゃん、おいらどうしても我慢ならねい。助けにいくからまってろよ」
音響 五右衛門のテーマソング
五右衛門 「おい、にいちゃん、こんなところでなにうろうろしてるんだい。おめえ、ひょっとしたら、この城にもぐりこみていじゃないかい」
忠助 「側女にされたヒサをとりもどすんだ。どうしても城にもぐりこむんだ」
五右衛門 「あんた、ど素人だね。いくら力んでもはいるにゃ技術がいるんだよ」
忠助 「ところで、あんた誰だい」
五右衛門 「よーく、きいてくださった。とわれて名乗るもおこがましいが、姓は石川、名は五右衛門、ひとよんで夜盗の五右衛門とはっします」
忠助 「すると、兄さんがあの有名な怪盗かい。なら、兄さん、なんとかヒサを助ける算段を考えてくれねえか」
五右衛門 「そうよなあ、こおした場合は故事にならって、城に火をつけ、どさくさにまぎれて、そのヒサちゃんていのを助けるとうのはどうだい」
忠助 「しかし、放火は御法度だよ」
五右衛門 「保険にははいっているんだろ」
忠助 「旦那様の話しだとロイドの保険にはいっているいってた」
五右衛門 「なら、かまわねいじゃねいか。おいらが火をつける。おめいさんは(火事だ)といって城内を混乱させ、ヒサを助ける。いいな」
忠助 「わかった。じゃ、手筈を整えるまで一日待ってくれ、決行は明日の夜、12時」
五右衛門 「おうよ」
19.津和野、二本松城、本丸
語り 「翌日の二本松城、本丸」
出羽守 「これ、ヒサ、そのようにいつまでも泣いていたのでは身体にさわるではないか 。忠助と離したのは余が悪かった。しかし、ヒサ、余も男じゃ。ヒサのような美しいおなごをみて、心が動かぬほうがおかしい。のうヒサ、忠助には良いおなごをあてがってやる。家の奥などどうじゃ」
ヒサ 「悲しみはここに連れてこられたことだけではございません。今日は満月。この日、私を月の使いが来て月の世界につれもどされるのです。ですから、おお殿様ともお別れしなければなりません」
出羽守 「なに月の使いとな、許せぬ、ヒサをつれていくとは許せぬ。これ三太夫、三太夫はおらぬか」
三太夫 「三太夫めにございます」
出羽守 「今宵、にっくき月の使いがヒサを月の国につれもどそうとやってくる。先手を打つのじゃ。城内に月見団子をくまなくばらまいておけ。つきの使者が団子を食べている間に射殺すのじゃ。うはははははは」
語り 「そして夜、12時」
音響 半鐘の音。消防車のサイレン
忠助 「火事だー、火事だー、おのおのおであいめされい、火事だー」
出羽守 「なんと、火事とな、三太夫、三太夫はおらぬか」
三太夫 「三太夫めにございます」
出羽守 「三太夫、火事は何処じゃ」
三太夫 「ここ、本丸でございます」
出羽守 「なに、本丸とな、しかし、ここは何ともないではないか」
三太夫 「外からみますと赤々ともえております」
出羽守 「なんと、面妖な。しかし、躊躇はなるまい、人間バーベキューはなんとしてもいやじゃ」
三太夫 「おヒサの方様はいかがいたしたしましょうや」
出羽守 「馬鹿、馬鹿、お前は余とヒサとどちらが大事だとおもっているのか、すぐに逃 げるぞ、すぐにじゃ」
音響 バタバタと逃げる音
音響 忠助のテーマソング
語り 「このようにして、バテレンから譲り受けた幻灯機を使った,火事のトリックにお殿様はまんまとひっかかったのでございます」
忠助 「ヒサちゃん、いたら返事して」
ヒサ 「忠助さん、ここよ、ここ」
忠助 「へへへ、やっと会えたね。手紙見てくれたんだね」
ヒサ 「昨日、橋本の奥方様から、急に使いがきて、中に忠助さんからの手紙がはいってたんで、びっくりしちゃった」
忠助 「奥方様はこんどの仕打ちを怒っていたから協力してくれたんだ」
ヒサ 「バテレンの幻灯機って、本当うにすごいのね」
忠助 「FSXと言うんだ。ジョージルーカスから教わったんだ」
ヒサ 「そして、私は月の使いに連れていかれることになるのね」
忠助 「おいらがその月の使いさ」
終わり
最近のコメント